■総評(GOOD)
・未知の生命体の不気味さが魅力的
・常に無重力状態なのが不安を煽り、ホラー・パニック物の舞台として最適
・賛否の分かれるラストシーン(個人的には非常に楽しめた)
■総評(BAD)
・訓練された宇宙飛行士達とは思えない危機管理能力の無さ
・シーンの繋がりが雑で、なぜそうなったのか分からない事が度々有る
・先の読める展開ばかり
- ■現代版「エイリアン」
- ■未知の生命体「カルビン」
- ■感情的で危機管理能力の無いISS乗組員達
- ■都合良く都合が悪くなる展開
- ■真田広之のマネジメントが不安
- ■そしてラストシーンへ(ネタバレあり!!)
■現代版「エイリアン」
ISS(国際宇宙ステーション)を舞台に、
火星から採取した土で発見された未知の生命体が乗組員を襲う……。
という、舞台を現代にした「エイリアン」と言える作品であった。
常に無重力状態で描かれる辺りは非常に「ゼロ・グラビティ」っぽく、
舞台設定だけでなく描写のリアルさも現代的。
SFホラー、パニック物として魅力的な世界観なのが良かった。
■未知の生命体「カルビン」
火星から採取され、「カルビン」と命名された未知の生命体。
肉体も知識も凄まじい速さで成長し狡猾に動き回るのが不気味で、
独特のフォルムも非常に魅力的だった。
無理やり火星から採取され、人間から乱暴に扱われている様子が不憫で、
ISSの乗組員よりもカルビンを応援してしまった。
■感情的で危機管理能力の無いISS乗組員達
この作品最大の問題点がこれである。
想定外の極限状態でパニックに陥るのを描いているのだとは思うが、
訓練され選び抜かれた宇宙飛行士とは思えない言動ばかりなのが非常に気になった。
一々感情的になるのも印象が悪い。
舞台設定は非常に良いのに、キャラクターに魅力を感じる事が出来なかった。
この手の作品で登場人物に感情移入できないと退屈さを感じてしまう。
「選び抜かれたエリートでも、この状況なら仕方ないよね」と思えるかどうかで、
この作品への評価はかなり変わってくると思う。
が、前述したように、未知の生命体カルビンを応援する気持ちになれば、
「いけ!そこだ!やっちまえ!」とテンションを上げて鑑賞する事も出来る。
■都合良く都合が悪くなる展開
これもかなり気になった。
シーンのつながりが非常に雑で「え?なんでそうなったの?」と何度も思った。
カルビンの移動経路を丁寧に描写したかと思えば、
何の説明もなく突然ワープしたように見える事も有るので混乱する。
悪い意味で予想を裏切らない展開が続くし、
シリアスな路線で描いてはいるが、どうにも全体的に間抜けな印象を受けてしまう。
SFドタバタホラーコメディというのがこの作品の本質ではないだろうか?
■真田広之のマネジメントが不安
この作品の感想とはちょっと離れてしまうが、
真田広之はあまり出来が良くない作品や、
微妙な役柄で海外作品に出ている事が多いという印象。
せっかく素晴らしい俳優なのに非常に勿体無いと思う。
もうちょっと出演作品や担当するキャラクターを選んだ方が良いのでは……。
■そしてラストシーンへ(ネタバレあり!!)
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この映画を楽しめるかどうかは、ラストシーンへの評価にかかっていると思う。
ハッキリ言ってオチは予想出来たが、個人的には非常に楽しめた。
楽しめた、というのは、もう完全に笑いながら見ていたからである。
知能の高さを侮った男はカルビンを乗せて地球に到達、
運の悪い女は障害物に弾かれて宇宙の彼方へすっ飛んでいく。
重厚で悲劇的なBGMがかえって笑いを誘う非常にシュールな展開だ。
そもそも二手に分かれて救命艇で脱出するのであれば、
女側が男からの合図(カルビンを誘い込んだという確認)を待つ必要がない。
なので、同時に脱出し、映像のトリックで地球に戻れたのが男女逆であった、
というオチを容易に想像できる演出になってしまっている。
「どうだ、予想を裏切る展開だろう!?」という制作側の意図が見え見えで、
それがかえって笑えてしまうというB級(Z級)映画でよくある現象に陥った。
SFホラーと思わせておいて、ドタバタ感満載の笑える作品であった。
頑張れカルビン!次は地球征服だ!