椅子と椅子の間から観る

映画の感想・解説やゲームの話

【映画感想】エイリアン:コヴェナント【記事後半ネタバレ有り】

■総評(GOOD)

・エイリアンが不気味で恐ろしい

リドリー・スコットならではの映像美

・ホラーとしてもSF映画としても楽しめる

 

■総評(BAD)

・乗組員が阿呆ばかり

・ストーリー展開やアクションシーンが雑

・続編ありきで深まる謎

 

 

 

■正真正銘のエイリアン

前作「プロメテウス」は製作段階で明らかにゴタゴタしていた。

エイリアン前日譚として企画されたものの完全新作のような方向性になり、

しかしながら結局内容はエイリアンの前日談であった……

という何とも中途半端な内容になっていた。

 

が、今回は紛れもなくエイリアン

不気味で、恐ろしく、でもどこか格好良いエイリアンを見れただけで大満足。

多種多様なエイリアンを見れて楽しめた。

 

特に、ネオモーフと呼ばれている真っ白なエイリアンのデザインが秀逸

滅茶苦茶気持ち悪くて、ただ立っているだけで怖い。

 

リドリー・スコットの描くエイリアンは、

何だかよく分からない人知を超えた恐ろしい存在」であって、

ホラー映画である事にこだわっているのを感じられた。

 

それと、H・R・ギーガーらしいデザインにもこだわっていたように思えた。

実際、雑誌「映画秘宝」を読むと、

ギーガーが残したデザイン画をかなり参考にしているのではと紹介されていた。

 

■プロメテウスの続編であるという事

タイトルをエイリアンとした事で心機一転新しく始める映画になるかと思っていが、

予想以上にしっかりと「プロメテウスの続編」であった。

 

前作でも登場していた、

マイケル・ファスベンダー演じるアンドロイドであるデヴィッド。

それと同型で今回新たに登場するウォルター。

 

この二人が非常に重要で、

この二人のキャラクター性を気にいるかどうかで作品の評価が大きく変わりそうな程。

 

個人的にはプロメテウスでのデヴィッドが非常に気に入っていたので、

その特徴的なキャラクター性がコヴェナントでも重要な役割を果たしていたのが良かった。

 

そこから広がるSF性も非常に面白くて、

人間・アンドロイド・エイリアンが入り乱れる

独特の世界観とストーリーが相変わらず素晴らしい。

 

■映画としてはやや雑に感じられる作り

リドリー・スコットならではの映像美は相変わらず素晴らしかったが、

アクションシーンはごちゃごちゃしていて何をしているのか分からない事が多かった。

 

また、シリーズ恒例では有るが、登場人物が阿呆ばかりなのが気になる。

お約束と言えばそれまでだが、2017年に公開される映画としてはお粗末。

 

とは言え、理性的な人物も居るし、行動原理は理解できる設定になってはいるので、

プロメテウスや、同ジャンルで最近公開されたライフよりはまともだったと思う。

ギリギリで許容範囲ではあった。

 

しかし、それにしても、

やはり乗組員が夫婦やカップルばかりなのはどう考えても悪手だろう。

 終盤のシャワーシーンは苦笑いするしか無かった。

 

■会話シーンの多さとその意味(ネタバレ有)

_

_

_

_

_

_

_

_

本作は会話シーンが多く、人によっては退屈に感じたかもしれない。

しかし、会話シーンにちゃんと意味が有り、伏線として機能しているのが良かった。

 

特に、移民先で小屋を作る云々の件が重要だった。

資材を運ぶ車は最終決戦の決め手になったし、

「小屋を作る約束守ってね」と言われた事に反応しなかった為、

ウォルターでなくデヴィットだと分かるという演出にはゾクっとした。

 

生き残ったのが実はデヴィットだというのは予想できる事だったが、

ネタバラシの方法が実に素晴らしく絶望感を味わえるのが最高。

 

ウォルターとデヴィッドの会話シーンも、

デヴィッドがウォルターに成りすます際の情報収集として役に立っていたんだな、

とトリックのための下地を作っているのが良い。

 

■解決された謎と、深まる謎(ネタバレ有)

_

_

_

_

_

_

_

_

本作で、エイリアン誕生の謎は明らかにされた。

エンジニアが作り出したエイリアンの素(と勝手に命名)を利用して、

デヴィッドが実験を繰り返した結果生まれたという内容であった。

 

人間が作り出したアンドロイドがエイリアンを生み出した、

という皮肉の効いた展開が凄く良かった。

 

プロメテウスではデヴィッドが妙に人間臭く好奇心旺盛な面があり、

「アンドロイドのくせにこのキャラクター性は何なんだ?」

という疑問点が有ったが、コヴェナントで生かされていた。

 

が、「結局エンジニアは何者で、どんな目的を持っていたのか?

という事がさっぱり分からない。

 

何やら、今回の舞台となった惑星に過去エンジニア達が住んでおり、

そこに何者かがエイリアンの素を撒き散らして壊滅させたらしい、

という短いシーンが有っただけ。

 

中途半端に描写されたがゆえに、かえって謎が深まるという結果になっていた。

 

リドリー・スコットにはあと2作エイリアンシリーズを制作する構想が有るらしいが、

コヴェナントの興行成績がイマイチだった事と、

リドリー・スコット自身が高齢な事もあって今後のシリーズ展開は不安。

 

上記の理由も有り、続編を前提としたストーリーになっていたのは不満を感じた。

122分の上映時間が有れば、もっと深く描けたのではないだろうか?

 

しかし、エイリアンは長く続いているシリーズであるがゆえに、

人それぞれエイリアンに求める物が違ってくるだろうから、

作る側もどこに焦点を置くべきか難しいだろうなとは思う。

 

なんにせよ、予定通り続編が制作される事を期待したい。

 

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村