■総評(GOOD)
・宇宙開発の裏側と当時の黒人差別について知る事が出来る
・重たい内容を軽快かつテンポ良く描き、暗くなり過ぎないよう配慮されている
・音楽が素晴らしい
■総評(BAD)
・当時の宇宙開発の背景について事前知識がないと話についていけないかも
・映画としての盛り上がり所がやや弱い
・邦題が酷い
■マーキュリー計画の裏側
「ライトスタッフ」は宇宙開発初期のパイロットを主に描いた名作だったが、
本作は計算係や事務、プログラマ等の裏方を描いている。
(この2作はぜひとも合わせて見るのをオススメ。)
また、当時はまだまだ黒人差別が根強く、
それについての描写もメインになってくる。
時代の最先端を走っていたNASAも酷い黒人差別を行っていた、
という事を真正面から描いたのに大きな意味が有るだろう。
そういったやや地味で重たい内容を、
後述する音楽に合わせて軽快かつテンポよく描いており、
「楽しんで見る」事が出来る素晴らしい映画だった。
■とにかく音楽が素晴らしい
本作は「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」や「ベイビー・ドライバー」のように、
音楽の力を最大限に活かしている。
辛くて胸糞の悪いシーンが多いが、
音楽のお陰で「頑張れ!負けるな!」という思いを強くして見る事が出来る。
嫌な上司にやり返すシーンも音楽と相まって気分爽快。
ある種、プロレス映画のような楽しみ方が出来る作品だと思う。
音楽の素晴らしさを堪能するために、ぜひとも映画館で見て欲しい作品。
■ややまとまりが無く、盛り上がりに欠ける
3人の主人公、宇宙開発、黒人差別、と内容たっぷりなだけに、
一部描写が薄かったり、映画としての盛り上がりに欠ける印象だったのが残念。
当時の宇宙開発事情についての事前知識がないと、
ストーリーを追うのがちょっと厳しいのでは?と思った。
事実を元にした作品である以上、
あまり脚色しすぎるとそれはそれで批判されるので難しい所ではあったと思うが、
先が予想出来て同じような展開が続いてしまうので、
終盤はやや飽きを感じる面も有った。
そういった部分を音楽やテンポの良さでカバーしているセンスが素晴らしいが、
「映画」としての面白さを補完するにはやや物足りなかった。
■全く意味が伝わらない邦題
邦題については、悪い意味で大きく話題になった作品である。
マーキュリー計画を描いた作品であるにも関わらず、
「ドリーム-私たちのアポロ計画-」と全くもって見当違いの邦題にした為、
多くの非難が寄せられた結果「ドリーム」というタイトルに変更された。
原題の「ヒドゥン・フィギュアズ」のままでは、
日本公開が厳しいというのは理解できる。
しかし、アポロ計画についての映画ではないのに、
「私たちのアポロ計画」というタイトルにしたのは詐欺同然であり、
批判されて当然だ。
そして最終的な邦題となった「ドリーム」も、
確かに映画の内容に沿ったものでは有るが、
タイトルだけでは何も想像できない意味のない物になってしまっている。
分かりやすくしようとした結果、映画の内容と離れた意味のない邦題になり、
映画ファンから批判が巻き起こる……という事例は事欠かない。
本ブログでも度々邦題について文句を言っている。
国によってタイトルを変えた方が良い事が有るのは分かるが、
せめて「映画の内容に沿った」「意味のある」タイトルにして欲しい、
と願うばかりである。