■総評(GOOD)
・最初から最後まで映像全てが美しく、印象的なシーンが多い
・主人公のKと、そのバーチャル彼女のキャラクターが凄く良い
・ブレードランナーの続編、として素晴らしい出来
■総評(BAD)
・前作のリドリー・スコットが手がけた映像に比べると物足りなさを感じる
・2時間40分の上映時間は長すぎて、所々ダレる
・ストーリーにまとまりがなく、大事な所が説明不足という印象
■ブレードランナーとしての映像美
とにかく、映像が素晴らしい作品。
前作が余りにも印象的でその後の映像作品に多大な影響を与えた為、
それの続編を別の監督が手がけるって大丈夫か?と不安もあったが、杞憂だった。
ブレードランナーらしい世界観を保ちつつ現代的な映像になっており、
一つ一つのシーンに見入ってしまう魅力が有った。
「それ何の意味があるの?」と突っ込みたくなるような過剰さも健在。
爆撃を指示しているシーンの謎のスタイリッシュさ等、
見ていてニヤニヤしてしまう。
ただ、前作のリドリー・スコットが作った映像に比べると、
やや物足りなさを感じたのも事実。
リドリー・スコットらしいホラーっぽさ、おどろおどろしい感じは無く、
ただただ静謐で美しいというのが本作の全体的な印象。
■ブレードランナーとしてのストーリー
監督が前作を見ていない人でも楽しめるようにしたとは言っていたが、
やはり前作有りきであり、
前作を経てデッカードが辿り着くラストシーンは非常に良かった。
進化した技術による倫理観や社会的問題等、奥深いストーリーや世界観も健在。
リメイクやリブートではなく、「続編」として非常に良く出来ていた。
ただし、デッカードと新主人公Kの2つのストーリーが存在し、
その2つの話がいまいち噛み合っておらずまとまりがない印象も受けた。
本作の本筋はKとそのバーチャル彼女の関係性に有ると思ったし、
実際そこが見ていて非常に面白かったので、
デッカード側の話で多少白けてしまった。
一番最後のシーンも前後を入れ替えた方が良かったと思う。
あくまで本作の主人公はKである、という方向性を貫いて欲しかった。
■あえて説明不足な作りにしているのだろうが(ネタバレ有)
前作もそうだったように、
本作も想像の余地を多く残す作りになっており、
あれこれ考えるのが楽しい作品だと思う。
しかし、それにしても、
「なぜKにデッカードの娘の記憶が移植されていたのか」
という重要な点についての説明が無いままなのは不満だった。
Kはデッカードの息子なのか?そうではないのか?
という部分がストーリーにおいて非常に重要になっていただけに、
記憶の経緯についてはしっかり説明して欲しかった。
というか、デッカードの娘がKにちゃんと説明していれば、
その後の騒動は起きなかったのでは……と思ってしまう。
ウォレス社長にしても、
あれだけ何度も出てきて色々と意味深な事を言っていた割に、
終盤では出番がなくデッカードと娘が会うシーンで終わってしまうので、
「あの社長、何だったの?本当にここで映画終わりなの?」
と思ってしまった。
どちらとも取れる曖昧な描写のままになっていたのは良かったと思う。
曖昧にして良い所と、
ちゃんと説明すべき所の切り分けが出来ていなかったかな、
という印象。
それと、2時間40分という上映時間のために、
もう1回見ようという気持ちが中々沸いてこないという問題も有る。
本来ならすぐに2回目を見て色々と考えたい作品なのだが……。
■森博嗣作品との関連性について、完全な余談(ネタバレ有)
本作はレプリカントの出産がストーリー上大きな要素になっていた。
これが、
森博嗣が現在刊行している小説「Wシリーズ」でも同じく重要な要素で、
そちらの内容と照らし合わせながら見るのが非常に楽しかった。
人間とは、レプリカント(Wシリーズではウォーカロンと呼ばれる)とは何か、
そこに違いは有るのか、有ったとしてその違いがなくなった時世界はどうなるのか?
といった点について非常に丁寧に描かれているので、
ブレードランナーが好きな人はぜひWシリーズを読むのもオススメしたい。
というか、Wシリーズ自体がブレードランナーに結構影響を受けているのでは?
とも思う。
Wシリーズについては以下リンクを参照。
「彼女は一人で歩くのか?」が一作目となる。
森博嗣の他シリーズとも深く関わっている作品なので、
出来れば「S&Mシリーズ」「Gシリーズ」「百年シリーズ」辺りも読むと楽しい。