椅子と椅子の間から観る

映画の感想・解説やゲームの話

【映画感想】GODZILLA :星を喰う者【ネタバレ有り】

アニメゴジラ3部作がついに完結。

 

本ブログではこれまでの映画2作品と、小説版2作品の感想・解説も書いているので、

そちらも合わせて御覧ください。

 

■映画1作目の感想

http://kinnikutuu.hatenablog.com/entry/2017/11/18/003502

■映画2作目の感想

http://kinnikutuu.hatenablog.com/entry/2018/05/18/205415

■小説版1作目の感想

http://kinnikutuu.hatenablog.com/entry/2017/11/07/184408

■小説版2作目の感想・解説

http://kinnikutuu.hatenablog.com/entry/2018/05/14/220833

 

本作及びシリーズ全体の感想については、以下。

 

 

3作目の感想

最初から怪獣プロレス映画としては全く期待していなかったので、楽しめた。

というのが個人的な感想。

 

ハッキリ言ってゴジラとギドラの戦いは非常に退屈。

巨大な固定砲台に巨大な蛇が絡みついているだけである。

アクション面に関してはシリーズが進むごとにショボくなっている。

 

しかし、SFの世界観にゴジラおよび怪獣を組み込んだストーリーは、

やはり非常に面白かったし魅力的であった。

 

ユウコが全く好きになれなかったので、

モスラの双子の片割れと主人公がくっつく展開も良かった。

モスラの双子の可愛さだけでもこのシリーズを見る価値が有ると思うくらいだ。)

 

主人公が人類文明が残した最後の機体(バルチャー)と共に特攻した決断も納得できる物だった。

バルチャーが有ればそれを元に人類文明を再興しようとし、

フツアの民と共存しかけていた流れは台無しになっていただろう。

 

結果的にはほとんど何も解決しておらず、怪獣惑星と共存して生きて行くだけだが、

このオチもSF作品としては正しいと思う。

 

アーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」を始め、

SF作品の多くはエヴァ人類補完計画みたいな流れに行くのが王道であり、

 ハルオはそこに抵抗し、人類がひっそりと怪獣惑星で生きていく道を選んだのだ。

 

シリーズ全体の感想

本当に、評価の難しい作品だと思う。

 

まずは問題点から

問題点としては、

①小説版(怪獣黙示録、プロジェクト・メカゴジラ)を読んでいないと背景が分からない

②怪獣バトルを期待してみると肩透かしを食らう

大きくこの2点になると思う。

 

まず①だが、本作は今時珍しいコアなSF作品であり、

膨大な数の設定や物語の背景が用意されているものの、

その多くが映画では描かれていない。

 

映画の前日譚となる小説の「怪獣黙示録」と「プロジェクト・メカゴジラ」は共に

超ミラクルウルトラスーパ大傑作なのは間違いなく、

ぶっちゃけ映画は見なくても怪獣好きなら小説だけでも読むべきと言える程だ。

 

※ちなみに、小説版「怪獣惑星」も出ているようだが、

これは映画版をそのまま小説にしているだけで特に読む必要は無いようだ。

(僕自身は読んでいないので、確かなことは言えないが。)

 

次に②だが、これはやはり、

当初の予定通りTVシリーズにしていれば良かったと思う。

正直に言って、劇場で鑑賞するのに耐えられるクオリティではない。

 

ドラマ重視のTVシリーズということで公開していれば、

もっと素直に楽しめる作品になっていたと思う。

 

怪獣映画として、SF作品として

問題点で指摘した内容の通り、

やはり怪獣映画としては低く評価せざるを得ない作品だと思う。

 

しかし、SF作品としては素晴らしい出来栄えのシリーズだと思うし、

ゴジラ」として作られた意味も有ったと感じることが出来た。

 

小説版を含めて全て見ると、

「怪獣とはなんぞや」という本質について徹底して描かれており、

「人類こそが怪獣であり、怪獣を生み出した原因である」というオチに至るまで

SF的な考証が非常に面白かった。

 

地球人類、エクシフ(宗教)、ビルサルド(科学)、フツア(自然)、

そして怪獣という複数の勢力が絡み合うドラマ性の高さも非常に楽しめて、

1作目公開前にスタッフが「これは人間ドラマだ」と言っていたのも納得できる。

 

SF作品の傑作である「幼年期の終わり」も非常に宗教的要素が強く、

アニメゴジラシリーズがそこから強く影響を受けているのは間違いないと思う。

 

そして、

元々人類(というか宇宙そのもの)は滅亡に向かって進んでおり破滅願望が有る、

そういった人類の破壊行為から怪獣が生まれた、

という話を広島への原爆投下を背景に語るシーンは非常に印象的だった。

 

核兵器を背景にゴジラという作品が生み出された魂を本作もしっかり受け継いでおり、

それをSF作品という形で描く事に成功していたと思う。

 

結論を言うと、

明らかに予算が足りておらず怪獣映画としてはガッカリだったけど、

小説版を含めてSF作品としては非常に面白いシリーズである。

 

 怪獣物とSF作品が好きな僕のような人間にはドンピシャなシリーズだと思うし、

SF作品好きであれば間違いなく楽しめるだろう。

ただ、怪獣物だけが好きな人にはオススメできない。

 

やはり、最初に言ったように「評価の難しい作品だ」と思う。