椅子と椅子の間から観る

映画の感想・解説やゲームの話

【映画感想】ジョーカー【ネタバレなし】

■総評(GOOD)

・この世の悪意を煮詰めたような凄まじい描写

・アメコミ映画の枠にとどまらない、文学作品のような内容

ホアキン・フェニックスの鬼気迫る演技

・(良くも悪くも)見る人によって受け取り方の幅が広そう

 

■総評(BAD)

バットマンの事を知らないと、万全には楽しめないかも

 

 

 精神面に多大な影響を与える傑作

凄まじい映画だった。

同日公開のジョン・ウィック3は見ていて肉体的に疲労を感じる作品だったが、

こちらは精神面での疲労が半端ではない。

 

上映終了後、観客席の皆がどんよりしていたのが非常に印象的。

 

かなり賛否の分かれる映画だとは思うが、

それだけ見た人に与える影響が大きいというのは間違いない。

 

この映画、中国あたりでは上映禁止になるんじゃないかな?と思う程だ。

 

ちなみに、僕はこの記事を書く前の日の夜に見て、

その日は就寝時に悪夢を見てしまった(夢の内容は覚えていないが。)

 

展開としては意外性はあまりないのだが、

映像、音楽、そしてホアキン・フェニックスの鬼気迫る演技で、

最初から最後まで息を呑むような緊迫感に包まれていた。

 

笑い、喜劇

それと、この作品の監督は元々、

ハングオーバー」というコメディ映画で大ヒットした人である。

 

そんな監督がジョーカーを手掛けると聞いた時は以外だったが、

実際に見てみるとなる程、

「笑い」「喜劇」といった要素を徹底的に追求した映画であった。

 

(そもそも、ハングオーバーシリーズもかなりストーリー性の高い作品だったし、

ハングオーバー3は結構シリアス寄りになっていたのでファンから否定的な意見も多かったが……。)

 

そして今、安易に「笑い」を取ろうとすると色々問題が起きる時代に、

ジョーカーという作品をコメディ作家が作ったというのは、

歴史的に大きな意味があるんだろうなという事も感じる。

 

「ジョーカー」というキャラクター

ただ、間違い無く素晴らしい映画だと思うが、

「ジョーカー」というキャラクターで語るならば、

ダークナイトヒース・レジャー版の方が圧倒的に好きだ。

 

この映画は「ジョーカー」というよりは、

「アーサー・フレック」という人間の物語だと思う。

 

それと、単体の映画として見た時に、

バットマンを知らないとウェイン一家関連の描写が不親切なのでは?と感じた。

 

アメコミ映画という枠に留まらない素晴らしい映画だっただけに、

バットマンを知っているという前提で作られているように感じたのは若干残念。

(とは言え、知らないなら知らないで、問題なく楽しめるのかも知れない。)

 

見る人による解釈の違い

それと、「賛否が分かれるだろう」という部分について。

 

ネタバレになるのであまり詳しくは言えないが、

この映画は直接的な描写をせずボカしている部分が多いので、

見る人の解釈によって本当に感想が変わってくると思う。

 

「安易に貧困者や弱者へのヒーローのように描いているのが嫌だった」

という感想を見かけたのだが、僕は全くそうは感じなかった。

 

「色々とボカして描写している」と書いたが、

多分あのシーンではあんな事をしているし、

直接的な描写でもあんな事をしていたし、

この作品におけるジョーカーは決して「弱者へのヒーロー」なんかではないと感じた。

 

というように、本当に見る人によって受け取り方が異なってくる映画だと思う。

 

なので、この映画に興味を持っている人に一つだけ伝えたいのは、

「とにかく今すぐ映画館に行くんだ!」という事である。