■総評(GOOD)
・成長したダニーの物語が面白い
・もう一人の主人公である少女を取り巻く物語が面白い
・上記二つの物語が絡み合い、シャイニングに繋がっていくスリリングさ
■総評(BAD)
・映画版のシャイニングしか知らないと設定の違いに困惑しそう
・上記に関連し、映画版のシャイングの続編として観に行くと「思ってたのと違った」となりそう
「シャイニング」について
まずこの作品を見る前提として、前作である映画「シャイニング」の話から。
スタンリー・キューブリック監督制作の「シャイニング」は言わずとしれた名作だが、
実は原作とはかなり内容が違っており、
原作者のスティーブン・キングが大層怒ったというのも有名な話である。
(これは映画「レディ・プレイヤー1」でもネタになっている。)
そして、「ドクター・スリープ」は原作と小説版両方の「続編」であり、
それによってどちらの続編でもないオリジナル作品とも言えそう、
という奇妙な立ち位置になっている。
なので映画版しか知らないと、
「あれ?そんな話だっけ?」
「シャイニングの続編って言う割にはなんか違う……」
と思ってしまいそうだなという内容になっている。
万全に楽しむには、原作を読むかネットで検索するなりして、
「シャイニング」の原作と映画版の違いを把握しておくのが良いと思われる。
ドクター・スリープ
ということで、
タイトルもシャイニング2とかシャイニング~◯◯~といった形ではなく、
「ドクター・スリープ」という、
聞いただけでは何だか分からないタイトルになっている。
成長したダニーを取り巻く物語で、
このタイトルの意味がわかるシーンが凄く良かった。
トレイン・スポッティング2でもそうだったが、
ユアン・マクレガーはくたびれた中年役をやらせると天下一品である。
(そこから立ち直って格好良い姿を見せてくれるのがまたたまらない。)
そしてもう一人の主人公と言える少女、アブラの物語も非常に面白い。
特別な能力を持つ人間が入り乱れての展開が非常にスリリングで、
思っていた内容とはちょっと違ったが、良い意味で期待を裏切られて楽しめた。
(ただ、人によってはそこで「この映画ついて行けないな」と感じるかもしれない。)
映画「シャイニング」はスティーブン・キングらしいケレン味はない作品であったが、
本作のアブラを取り巻く話は非常に「スティーブン・キングらしい」楽しさが有って良かった。
ただやはり、映画版と原作版の両方を採用した続編となっているだけに、
途中で映画の雰囲気が大きく変わるので、
見ていて集中力を持続させるのがちょっとしんどかった。
とは言え、見ていて微妙に負荷のかかる感じが映画の内容と合っており、
スリリング&ホラーな展開を存分に楽しむことが出来た。
ホラーを期待して観に行くとやや肩透かしを食らうかもしれないが、
良い意味でのB級感と、
キューブリック作品の美しさ・静謐さを絶妙なバランスで両立させた名作。