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映画の感想・解説やゲームの話

【映画感想】テネット【ネタバレなし】

■総評(GOOD)

・時間の逆行を描いた、唯一無二の圧倒的な映像体験

・SF作品好きにはたまらない濃い設定

・スパイ映画としても質が高く楽しめる

クリストファー・ノーランらしい「そういう事だったのか!」という快感

・とにかく凄い、凄すぎて凄まじい体験を出来る

・奇妙なBGMが素晴らしい

 

■総評(BAD)

・情報量が多すぎて1回見ただけでストーリーを万全に追うのは難しい

・SF作品やクリストファー・ノーラン作品に馴染みのない人は全くついて行けなさそう

 

 

ノーラン節が炸裂したノーランの集大成

 

面白い映画を見た、というよりは「とんでもない体験をした」というのが相応しい作品だった。

 

予告編では意味不明だった「タイムトラベルではない、時間の逆行だ」という台詞。

これが、映画を見ることで、理解できた。

いや、理解できたというより、やはり「体験できた」というのが正しいと思える。

 

作中でも「考えないで、感じるのよ」といった台詞が有った。

本当にその通りで、考えすぎると深みにハマって訳が分からなくなると思う。

 

決して悪い意味で言っているのではなく、

時間を題材にした本格的なSF作品とはそういうものだ。

 

ネタバレなし……と言っても、

そもそもこの作品を見ていない人にネタバレするのが難しい。

 

「世界の破滅を防ぐために、時間の逆行を利用する」

と、これ以上でもこれ以下でもない単純明快なストーリーだ。

 

ただ、その「時間の逆行」という概念と、それを映像化した表現の複雑さにより、

とてつもなく難解で、それでいて爽快感のある奇妙な作品になっている。

 

ただ、2時間半に及ぶ上映時間と、複雑すぎる設定と演出なので、

映画に見慣れていない人やSF作品の素養がない人が見るのはかなり厳しいと思う。

 

僕自身、1回見ただけではこの映画を存分に楽しめたとは言えないように感じた。

絶対に2回目を映画館に観に行くし、それによってこの記事もまた更新したい。

 

脳の処理能力を超える映像、SF好きにはたまらないワクワクする設定

 

「時間の逆行」という設定自体は、これまでにもした人が居たはず。

この発想を持つこと自体は、お話を作る人であればたどり着くことが多いだろう。

 

ただ、それを小説や漫画で表現するのは不可能。

かと言って映像で表現するのも至難の業で、だからこそこれまで実現しなかったのだと思う。

 

しかし、それを作り上げてしまったのがクリストファー・ノーラン

 

メメント」で10分前しか記憶を保てない主人公を題材に、

時間軸で言えば最後から映画を初めて10分前、その10分前、さらに10分前……

時間軸を逆に描いた作品を作った。

 

インセプション」では夢の中の夢の中の夢の中……と、

時間の流れの違う多数の世界を同時並行で描いた。

 

インターステラー」では時間を飛び越える宇宙規模のストーリーを。

 

ダンケルク」では1週間の話と、1日の話と、1時間の話を交互に展開させた。

 

そうやって「時間は前から後ろに進んでいく」という事自体を否定し

時間の流れを自由自在に操ってきたノーラン。

 

長い年月をかけて「時間」を描く作品の経験を積んできたからこそ、

「時間を逆行する」という余りにも不可解すぎるネタを映像化できたのだと思う。

 

そして、その「時間の逆行」というネタだけでなく、

スパイ物としてクオリティが高くワクワクドキドキしながら見れるのも良い。

 

一発ネタだけではなく、映画としてちゃんとした縦軸が有り、

ストーリーがしっかりしているのがまた凄い。

 

音楽の素晴らしさ

ノーランは映画音楽の巨匠ハンス・ジマーと組んでいたが、

今回は新たにルドウィグ・ゴランソンという作曲家を起用した。

 

ブラック・パンサー等の曲を担当した人で実績は十分だが、

とは言えノーラン作品ではハンス・ジマーの音楽がかなり大きな影響を与えていたので、

そこは少し不安な部分であった。

 

が、実際に見て、そんな不安は吹き飛んだ。

 

「時間の逆行」という奇妙キテレツなテーマにドンピシャの、

聞いていてなんとも言えない不思議な感覚になるBGMの数々で、

今までに「見たことのない映像」と「聞いたことのない音楽」の相乗効果が炸裂。

 

BGMというか効果音というか、とにかく凄かった。

 

テネットを楽しむためにオススメ、予習しておきたい作品

 

というわけで、とにかく斬新で複雑な映画なので、

この映画を楽しむためには映画への慣れ、SF作品への慣れが必要だと思う。

 

テネットを見るためにおすすめの作品をいくつか紹介。

 

映画

まず、先にも述べたノーラン作品のうち以下は必見。

これらを見ておけば、とりあえず十分に楽しめると思う。

 

メメント

インセプション

インターステラー

ダンケルク

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メメント [Blu-ray] ,インセプション [Blu-ray] ,インターステラー [Blu-ray] ,ダンケルク [Blu-ray]

 

ベタであるが

バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズ

ターミネーターシリーズ

あたりは、やはり良いと思う。

 

他に時間をネタにした映画として、

・ミッション:8ミニッツ

事件の発生した8分間を繰り返し体験して真相にたどり着く作品

 

バタフライエフェクト

意識を過去の自分に飛ばすタイムトラベル物

 

・ルーパー

未来の自分が自分を殺しに来るタイム・サスペンス

 

などが作品自体面白いし、時間をネタにしたSF作品への見識が深まるだろう。

 

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ターミネーター2 4Kレストア版 [Blu-ray], バック・トゥ・ザ・フューチャー [Blu-ray]

 

ミッション:8ミニッツ [Blu-ray], Butterfly Effect, [DVD], LOOPER/ルーパー Blu-ray

 

小説

小説では、

・八月の博物館

時間と場所を飛び越える事ができる博物館が舞台の物語

 

・星を継ぐもの(から始まる「巨人たちの星」シリーズ)

説明するとネタバレになりそう、時間をネタにした大傑作

 

学校を出よう!(2巻)

涼宮ハルヒシリーズで有名な谷川流ラノベシリーズ、の2巻。

現在・過去・未来の3人の自分が集まって謎解きをするお話で、

軽く読むことができつつもタイムトラベル物としての完成度も高い。

 

「映画や小説ってあんまり見ないし、ましてやSF物なんて」と思う人にオススメ。

いきなり2巻から読んでもそこまで問題ないはず。

(個人的にはハルヒシリーズよりこっちのが好きなので続きを書いて欲しい)

 

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八月の博物館 , 星を継ぐもの (創元SF文庫),学校を出よう!(2) I-My-Me (電撃文庫)

 

漫画

SF作品への慣れの為には、まずドラえもん」を見るのが一番オススメ。

ドラえもんの原作漫画をしっかり読んでいれば、それだけでかなりのSF通になれるだろう。

 

他には以下。

 

僕だけがいない街

タイムリープ能力を持つ主人公が事件の謎を解き明かすサスペンス物

 

PSYREN(サイレン)

未来と現代を行き来しながら超能力で戦うSFファンタジー

 

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ドラえもんまんがセレクション ドラえもん50周年!スペシャル

僕だけがいない街 コミック 1-9巻セット (カドカワコミックス・エース)

PSYREN-サイレン- 全16巻完結セット (ジャンプコミックス)

 

以上