ジョジョの奇妙な冒険第8部、ジョジョリオンの最終巻が発売された。
2011年連載開始だったので、10年連載していた事になる。
連載期間としてはシリーズ一番の長さだ。
ただ、全27巻とは言え1巻のページ数が少なかったので、
正確には分からないが、
実際のボリュームとしては今までのシリーズとそう変わらないと思われる。
ともあれ、ジョジョ好きとして、完結記念で感想記事を執筆。
先に結論と言っておくと、
「中盤までは凄く面白かったが後半はつまらない」
である。
ミステリーへの挑戦と失敗
まず、このジョジョリオン、
ジョジョシリーズでは初めての「本格ミステリー仕立て」といえる物語であった。
全裸で地面に埋まっている所を発見され、記憶を失っていた主人公。
何かしら秘密を抱えている様子の東方家。
こういった「謎」が提示され、それを解き明かしていく構成。
しかし、良くも悪くもジョジョの作者である荒木飛呂彦の強みは、
「前後関係や設定の矛盾を多少無視しても、その場の勢いで面白い展開を描く」
という点にあると思う。
なので、張り巡らされた伏線、緻密な設定を解き明かしていくような手法は、
残念ながらジョジョには合わなかった。
序盤で主人公の本名が吉良吉影かもしれない、
と分かった時などは凄く盛り上がったし興奮したが、
結局そういった4部を元にした設定が活かされる事はあまり無かったのが残念。
悪魔の手のひら、壁の目、岩人間といった新要素がほぼメインだったので、
そもそも杜王町を舞台にした意味が感じられなかった。
「ジョニィ・ジョースターが死亡した日に海岸に流れ着いた赤ん坊が居る」
という情報が出たがその後登場する事がなかったり、
吉良・ホリー・ジョースターを助ける事が主目的だったはずなのにホリーが結局どうなったか分からないままだったり、
と「意味ありげな設定がそのまま放置」という点が多かったのも気になる。
いや、今までのジョジョシリーズでもそういった放置プレイは度々あったが、
「まぁ荒木飛呂彦のやる事だし」で流していた。
ただ、今作の「ミステリー仕立て」という構成でこの運びの粗さは致命的だった。
吉良吉影の妹であり、
星の痣を持つ虹村京がほとんど出番もなかったのも勿体なさすぎるた。
実質、主人公である定助の妹ともいえる立場だったのに……。
中盤までは凄く面白かった
さて、そんな訳で、「隠された謎を解いていく」という仕掛けは、
ハッキリ言って面白くなかった。
とは言え中盤までは見どころも沢山あった。
先ほど述べたように主人公と吉良吉影に関連が有る事が分かった時は盛り上がったし、
カツアゲロード、東方常敏との昆虫バトル、田最環とのバトル、ミラグロマン、
吉良吉影と空条仗世文の過去の話等は凄く楽しく読めた。
吉良吉影と笹目桜二郎の因縁がしっかり活かされていたのも良かった。
しかし主人公の正体が判明した後、ロカカカ争奪戦からは、
「誰が何を目的に動いていて」「何が勝利条件なのか」
といった点が分からないので読んでいて熱中できなかった。
明確なラスボスの不在
一番良くなかったのは、ラスボスの扱いだと思う。
最後の最後まで誰がラスボスか分からず、
そのラスボスもぽっと出の岩人間だったのでどうにもテンションが上がらない。
無敵の院長が出てきた辺りはちょっと面白かったが、
それも結局は自動追尾型のスタンドが正体だったので拍子抜け。
病院の医師で敵として出てきた羽伴毅の方がよっぽど魅力的だった。
人間社会に潜む岩人間の設定は魅力的だったのだが、
これもオリジナリティ過ぎる設定なのでミステリー主体の物語には噛み合ってなかったように思う。
大味で単調なスタンドバトル
もう一つ、「遠隔自動操縦型のスタンド」が多かったのも、
見ていてつまらなかった。
結局は「本体を探して始末しなければ」になってしまうので、
非常にワンパターン。
そもそも主人公のソフト&ウェットの「奪う」という能力も非常に曖昧であり、
その時々で作者の都合によって出来る事が変わっている感じがしたのも良くなかった。
最終的にゴー・ビヨンドという「無の回転」で厄災を突き抜けるのはちょっと面白かった。
ただこれも前作スティール・ボール・ランの大統領最終戦にて、
「無限の回転」で「聖なる遺体の発する現象を突き抜ける」というネタとほぼ同じなので、
長い時間をかけた割に同じ展開か……とガッカリしてしまった。
広瀬康穂のペイズリー・パークもあまりにも「何でもあり」な能力で、
ほぼこの二人しか仲間が居ない展開なので、
物語後半のバトルは本当につまらなかった。
仲間がほぼ主人公二人のみなのは前作のSBRでも同様だったが、
あちらはジャイロとジョニィの名コンビっぷりが最高だったので、
悪い意味での対比になってしまっていたなあと思う。
エピローグは凄く面白かった
と、色々文句を言ってきたが、
ルーシー・スティールとジョセフ・ジョースターの二人が主人公の
エピローグは凄く面白かった。
ここでのジョセフ・ジョースターは、
ジョニィの孫でホリーの父親にあたる人物。
このジョセフが短い話の中で凄く魅力的だったのと、
ハーミットパープルっぽい使い道の限られそうな能力っぽかったので、
ジョジョリオンは最初からジョセフ主人公でやって欲しかったな、
と思ってしまう程であった。
終わり良ければ総て良し!
SBRから続く因縁は第9部にも持ち越されそうなので、
9部では
・明確なラスボスを早めに登場させて物語の縦軸を作る
・シンプルな能力でのバトル
・魅力的な仲間を増やし、主人公のバトルばかりにしない
といった、かつでの第3部のような構成にして欲しいなと思う。
ジョジョリオンで起こった事のまとめ
時系列の箇条書きで、ざっくりとジョジョリオンで起こった事をまとめる。
作品自体が結構大雑把であり、
ここでの記述も間違いが有るかと思われるので、
参考程度に。
■1901年
・ジョニィ、病に侵された日本人の妻の療養の為日本に
・盗んだ聖なる遺体で妻の病を誰かに移そうとしたが、息子のジョージに病が移ってしまう
・ジョージを助ける為に、ジョニィが病を引き受けて死亡
(この際に、遺体のエネルギーでカツアゲロードが生まれる)
■1941年
・ルーシー・スティールがスピードワゴン財団職員として、杜王町を調査する為に来日
・そこでジョセフ・ジョースター(ジョニィの孫)と遭遇、一緒に調査を行う
・岩人間を発見。おそらくSPW財団に情報を持ち帰る。
■1944年
・ルーシー・スティール、再度来日を望んでいたが、叶う事なく死亡
■2011年
・吉良吉影と空条仗世文、吉良吉影の母ホリーを助ける為、ロカカカの枝を盗み接ぎ木する
・収穫直前で岩人間の田最環と八木山夜露に襲われ、吉良が重傷を負う
・傷を治すためにロカカカの等価交換で二人が融合し、記憶を失って定助となる
=====ここからジョジョリオン本編=====
・発見された定助、東方家に引き取られる
・東方家の面々や、杜王町のミステリースポット等とバトル
・色々有って杜王町で暗躍する岩人間達を撃破
・ロカカカは失われ、東方家にかかっていた病(呪い)も解放される
・東方家の母親の花都、長男の常敏はロカカカ争奪戦の中で死亡
・吉良吉影の妹、虹村京も死亡