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映画の感想・解説やゲームの話

【映画感想・ネタバレ有り】ブレット・トレイン【原作小説(マリアビートル)との違いも解説】

■総評(GOOD)

・魅力的なキャラクター達による群像劇の面白さ

・予測の付かない展開

・散りばめられた伏線が回収される気持ち良さ

・原作小説の面白さを再現しつつ、ハリウッドらしいアクションが展開される

 

■総評(BAD)

・原作小説未読だと情報量が多い&展開が早すぎてついていけないかも?

・原作で特徴的だった一部キャラクターの魅力が損なわれている

 

 

予想以上に「マリアビートル」そのまま!

原作小説であるマリアビートルが大好きなので期待半分不安半分だったが、

最高に楽しめて超大満足!であった。

 

細かい変更点と終盤のぶっ飛び具合を除けば、

キャラクターのやり取りやストーリーはほぼ原作小説のまま。

 

それを1本の映画でテンポよく描き、

ハリウッドらしいアクションを存分に詰め込んだ出来の良さは見事。

 

多数の登場人物それぞれのストーリーが交わり、

予想の付かない展開の連続の中、

最終的に一つに収束していく気持ちよさは原作小説の魅力をしっかり再現していた。

 

以下、感想も交えながら原作小説との違いを解説。

 

原作小説との違い

舞台の変更

東北新幹線から東海道新幹線に変わっているが、本筋には影響なし。

 

原作の1作目「グラスホッパー」要素の削除

原作小説「マリアビートル」は「グラスホッパー」の続編である。

 

が、1本の映画にまとめる為、当然ながら「グラスホッパー」要素は全削除。

 

グラスホッパーの主人公であった鈴木の出番はなくなった

・同様に、アサガオも出番なし

 

また、狼は「殺された寺原(1作目の裏社会のボス)の復讐」でなく

「殺された妻の復讐」に設定が変更されている。

 

鈴木と王子、天道虫の会話はかなり重要な要素ではあったが、

無くても作品としては成り立つし気にはならなかった。

 

※ちなみに伊坂幸太郎の殺し屋シリーズとして、三作目の「AX(アックス)」が有る。

 

 

 

親玉「ホワイト・デス」の追加

原作では峯岸が裏組織の親玉であったが、

映画版では話が始まる前の時点でホワイト・デスと呼ばれる人物に殺害されている。

 

映画終盤まではこの設定変更もあまり影響がなかったが、

本作の終点である京都に着いてからは一変する。

 

重要な点として、新幹線内に集合した殺し屋達については、

原作小説では殺し屋のうちの一人であるスズメバチ(映画ではホーネット)が峯岸を殺害するために集めたのでは?

という話であった。

 

これが映画では分かりやすく「全てホワイト・デスの計画」だった、

というのが終点である京都で判明する。

 

後述する「木村の父」と「王子」の設定変更も伴い、

全てがホワイト・デスに収束しド派手なアクションが展開される流れは、

良い意味でハリウッド映画らしいオリジナル展開で最高だった。

 

王子の性別変更

原作では男性であった王子が、映画では女性に変更。

しかし、これには原作読者を騙すトリックが仕掛けられていた。

 

原作の王子は「幼さゆえの純粋な好奇心による邪悪さ」で行動しており、

これといった目的がないのが恐ろしかった、

ストーリーの本筋とはほとんど関係ない所に居る人物。

 

対して映画版の王子は「ホワイト・デス」を殺すという明確な目的が有る。

そして、それが「実はホワイト・デスの娘でした」というネタに繋がっているのだ!

 

原作ではボスに隠し子である娘が居てそちらに愛情を注いでおり、

息子にはあまり期待していなかったという描写が有る。

そこを利用して、王子=ボスの娘という設定にしたのは面白かった。

 

……が、原作でも王子はボス(峯岸)の殺害を計画していたが、

これもただ興味本位でやってみようと思っていただけで、

そこまでこだわりが有る訳ではなかった。

 

その純粋な邪悪さこそが王子の魅力だったので、

「父親に認めて貰いたかった」「自分が組織のボスに成り変わる」

というありきたりなキャラクター像になってしまったのは残念。

 

ホワイト・デスの娘という設定にしたのは良かったが、

「ただ興味本位で悪事を働いている」というキャラクター性はそのままにして欲しかった。

 

木村の父の設定変更

映画では真田広之が演じる「木村の父」も原作ではほぼ部外者であった。

が、映画では峯岸の組織の一員であり、

ホワイト・デスに妻と峯岸を殺された恨みを持っているという設定に。

 

こうして原作よりも「登場人物皆がホワイト・デスとなんらかの因縁が有る」とした事で、

映画的にまとまりが出て、最後の大アクションシーンが盛り上がるのは熱かった。

 

しかし、原作では妻も存命で、夫婦で過去に裏稼業を行っていたという設定。

老夫婦が軽快なトークで応じを追い詰めるのが面白かったので、

「危ない老夫婦」というユニークなキャラクター性が損なわれたのが残念ではある。

 

レモンの生存

原作では死亡したレモンが映画では生き残った。

 

面白黒人が生き残るのは映画あるあるだが、

「生き残ったレモンが王子をぶち殺す」という原作と違う流れは最高!

 

原作では木村の親である老夫婦が王子を連れ去り、

その後どうなったか分からない……という不気味さが良かった。

 

が、映画的には爽快に王子をぶっ殺すのが正解だと思う。

 

不運な天道虫の乗車理由

原作では(おそらく)スズメバチからの依頼で乗車した天道虫。

 

映画版では

「妻を殺したカーバーを乗車させる為にホワイト・デスが依頼を出したが、

カーバーが体調不良を理由に天道虫に依頼を投げた」

という種明かしがラストでお披露目。

 

天道虫の不運っぷりが原作より強調されているし、

ホワイト・デスが復讐のために用意した計画が天道虫の不運のせいで台無しになる、

という間抜けっぷりも面白かった。

 

ちなみにこのカーバーの姿がほんの数秒登場するが、

演じていたのはライアン・レイノルズ

 

本作の監督が制作したデッド・プール2では、

ブラッド・ピットが数秒カメオ出演していた縁で登場したらしい。

 

それと、天道虫の仲介役であるマリアも最後に登場。

これがサンドラ・ブロックなので無駄に豪華であった。