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映画の感想・解説やゲームの話

【映画感想】アド・アストラ【ネタバレ無し】

■総評(GOOD)

・圧倒的な美しさと迫力のある映像

・ブラピ演じる主人公が非常に魅力的

・現代の感覚で描く「男らしさ」と、「宇宙探索」をかけ合わせたドラマ性

 

■総評(BAD)

・無理に映画的な盛り上がりを作ろうとしたせいか、一部の展開が強引過ぎる

・上記も合わせ、静謐で淡々とした雰囲気と、映画的な盛り上げのバランスのとり方がイマイチ

 

 

 

圧倒的な映像の力

劇中の全て映像が美しくて、迫力満点のアクションも素晴らしかった。

 

オープニングで目を奪われ、月での攻防にワクワクドキドキし、

宇宙探索での孤独感・閉塞感を観客も共に感じられるような、

最高の体験型ムービーだった。

 

映画なのだからまず映像の力で魅せるというパワーを感じられた傑作。

 

とは言え、それだけではなく、ドラマ性の高さも素晴らしかった

 

「男らしさ」とその弱さ

ブラピと言えば、「男の中の男」「男でも惚れる男」といった役のイメージが強く、

実際に「ファイト・クラブ」のタイラー・ダーデン役は映画史に残る大人気キャラクターだと思う。

 

本作でもそんな「男らしい」人間を演じているけれど、

その「男らしさ」ゆえの人間的な弱さや孤独感を描いていて、

「男らしさってなんだ?」と考えさせられるドラマ性の高さが素晴らしかった。

 

旧時代的な「男らしさ」の良さと、

現代的な感覚での「でもそれで本当に良いの?」というせめぎ合い。

 

”不要なものは切り捨てろ、自分にとって最も重要な事だけを優先しろ。”

まさに「ファイト・クラブ」のタイラー・ダーデンが言いそうな言葉だ。

しかし、宇宙探索に出て真の孤独感に苛まれた時、「男らしさ」はどうなるのか?

 

と、「男らしさとは?」という題材と「宇宙という舞台」が見事に融合した作品だと感じた。

 

映画全体のバランスはやや悪し

映像もドラマ性の高さも素晴らしかったが、映画全体をみるとややバランスの悪さを感じた。

 

基本的には静謐で淡々とした雰囲気の映画なのだが、

中途半端に映画的な盛り上がりを作ろうとしたせいか、

一部であまりにも強引な展開が見受けられた。

 

エイリアンのような(良い意味での)B級ホラー映画でならともかく、

この映画で「いやその行動はアホ過ぎるだろ」と思ってしまう宇宙船クルーが居たのは凄く残念。

 

とは言え、それでも人によっては退屈に感じてしまう内容では有ると思うので、

個人的にはもっと地味で淡々とした映画に振り切って作って欲しかった。

 

良い所を見ればインターステラーゼロ・グラビティとマッド・マックスとファイト・クラブをかけ合わせた傑作」と言えるし、

悪い所を見れば「詰め込みすぎて中途半端」な作品とも言えるな、という感想。

 

とは言え、映像の素晴らしさと、ブラピの魅力だけで見る価値のある映画。

ぜひとも、上映中に映画館で見て欲しい!