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【感想】攻殻機動隊SAC2045(シーズン2)【ネタバレ有り】

シーズン1の感想は以下の各記事から

 

【感想】攻殻機動隊SAC2045(1~3話)【ネタバレ無し】 - 椅子と椅子の間から観る (hatenablog.com)

 

【感想】攻殻機動隊SAC2045(4~7話)【ややネタバレあり】 - 椅子と椅子の間から観る (hatenablog.com)

 

【感想】攻殻機動隊SAC2045(8~12話)【ややネタバレあり】 - 椅子と椅子の間から観る (hatenablog.com)

 

 

ボンヤリとしたまま終わってしまった

まず、シーズン2として展開されているものの、

内容としては過去作と同様に同様1~24話で一つのシリーズとなる。

 

正直、シーズン1の公開から随分間を空けて配信された事もあり、

シーズン2を見ていてちょっと気持ちが上がらなかった。

 

それを除いても、シーズン1で述べた悪い印象の感想を覆すほどの面白さは無かった。

 

謎が謎を呼ぶ展開で、最終的にやっぱり色々分からないまま終わったので、

どうしてもボンヤリとした印象になってしまう。

 

「ポスト・ヒューマン」の魅力の無さ

まずは、今作で敵となる「ポスト・ヒューマン」について。

過去作の「笑い男」「個別の11人」と比べて、

「ポスト・ヒューマン」は非常に魅力に欠ける存在だった。

 

ほとんど台詞が無いのでキャラが立っていないし、

アメリカが開発したAI(1A84)に感染して超人的な進化をした」

という設定も都合が良すぎてなんだかなあ、と思ってしまう。

 

ポスト・ヒューマンの目的は「ダブル・シンク」の世界を構築する事であった。

(ややこしすぎる「ダブル・シンク」については後述する。)

 

しかし結局これはAIが

「全世界の繁栄」と「アメリカの覇権」という2つの矛盾した指令を受けた事で、

それを解決するために編み出した方法である。

 

となると、ポスト・ヒューマンであるシマムラ・タカシの理想というよりは、

AIが合理的に考えた事なので、

じゃあ「ポスト・ヒューマンも結局はAIに利用されただけ」という側面が強いように思える。

 

じゃあ「AIの存在」を脅威として描いているかとそうでもなく、

ストーリーとしてはポスト・ヒューマンに主軸を置いている。

 

なので、やはり「敵に魅力がなかったな」という感想になってしまう

 

最後の最後もシマムラ・タカシが

「少佐(のような人)がダブル・シンクの世界を避けて自分を追ってくるのは想定できていたのに、対策していなかったので自分の負け」

と、よく分からん理由で敗北宣言をする。

 

そこまでありとあらゆる対策を練っておいて、

一番大事な所で対策を用意していなかったのは納得出来ない。

 

「ダブル・シンク」と物語の結末

さて、この「ダブル・シンク」の世界がややこしい。

 

どうやら

「現実の世界を生きながら、同時に自分にとって都合のいい仮想世界でも生きていく」

といった状態を指すらしい。

 

何となく分かるような気もするけれど、やっぱり分からん。

 

作中でもプリンが「ダブル・シンク」について説明しようとするが、

微妙な例え話をして「説明するの難しいです~」で流されてしまう。

 

そこはもっときっちりしっかり明確に説明して欲しかった。

 

そしてシマムラ・タカシは「ダブル・シンク」の世界を完成させるか、解除させるか、

その判断を少佐に委ねる。

 

少佐がダブル・シンクを解除したかどうかは不明なまま終わってしまうが、

①プリンが全くの新人として公安9課に入り直す(既存メンバーも新人として扱っている)

②離婚したトグサが(劇中のわずかな期間で)再婚しているような描写が有る

といった露骨に不自然な描写から、おそらく誰かがダブル・シンク状態で見ている夢だと思われる。

 

とは言え

「少佐やプリンが既存メンバーの記憶を改竄した」「トグサが復縁した」

という解釈も出来るので、

やはり「ダブル・シンクが続いたかどうかは見ている人の解釈次第」なのだろう。

 

全体的にフワフワした状態で話が進み、謎が謎を呼び、

最後も「解釈は見ている人に任せます」で終わってしまうので、

モヤモヤした感情が残ってしまった。

 

タイトルと内容について

本作は「スタンド・アローン・コンプレックス」というタイトルであり、

過去作はこのタイトルが重要な意味を持っていた。

 

しかし今回は「AI(1A84)」または「ポスト・ヒューマン」の自己都合を強く感じたので、

タイトルに相応しくない内容だなあと思ってしまった。

 

そこも残念な点である。

 

それと、現実社会の問題を攻殻機動隊の世界観に落とし込み、

SFでありながら現実との地続きである事も感じさせるのが「SAC」シリーズの魅力だった。

そこに関しても今回は「完全にSF作品」だったなという印象。

 

刑事ドラマのような面白さも無くなっていたし、

一話完結型で楽しめるエピソードもほとんど無かったし、

これ「SAC」としてやる意味有った?というのが個人的な感想。

 

だいぶ厳しい評価になってしまったが、とは言え楽しむには楽しめた。

攻殻機動隊」および「SAC」シリーズとしては低い評価になるが、

世の中に無数にあるアニメの中では十分に面白い作品だと思う。