■総評(GOOD)
・前作からさらにパワーアップし、工夫を凝らした大量のアクション
・コンチネンタルホテルを中心とした世界観、個性的なキャラクターも魅力倍増
■総評(BAD)
・内容を詰め込み過ぎなせいか、一部シーンの繋がりが分かりづらい
・上映時間122分はやや冗長で、前作に比べまとまりの無さを感じた
■前作から大幅にパワーアップしたアクション
この手の作品は2作目で方向性を見失ったり、
大げさにやり過ぎたりでイマイチな出来になる事が多い中、
前作の良い要素を見事に昇華させた傑作に仕上がっていた。
まず、本作の売りである、独特の近接銃格闘術「ガン・フー」。
更にライフルやショットガンでも近接格闘を行うという、
より面白みの増したアクションになっていた。
銃をリロードする際も色々なリロードの仕方をしており、
細かい動作一つ一つが工夫に満ち溢れていて本当に面白い。
……余談ではあるが、本サイトのレビューで既に指摘しているように、
CGアニメーション映画「バイオハザード:ヴェンデッタ」は、
明らかにジョン・ウィックから大きな影響を受けていた。
その中で、ライフルでガン・フー的な事をやるというのを、
クリスがジョン・ウィック2に先行して見せつけていたので必見。
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その他にも範囲の限られた敷地内でのカーチェイス、
周囲の環境やその場に有る物を利用した工夫満載のアクションが連続で、
一見地味で有りながら他に類を見ない
「ジョン・ウィック」シリーズとして最高の出来だった。
雑誌「映画秘宝」では、
・車を利用した「カー・フー」
・鉛筆を利用した殺人筆記術「ペン・フー」
等勝手な用語を生み出していたが、
それが的外れでないという恐ろしい映画である。
追記:
「カー・フー」は1作目ディスク版の映像特典で監督自身が言っていた。
■魅力的な世界観とキャラクター
これも、前作から引き続いて非常に素晴らしかった。
殺し屋たちが集う「コンチネンタル・ホテル」と、
それに関連するサービスが見ていて凄くワクワクする。
本作ではスーツの仕立てや武器の調達等で数々のサービスが登場し、
その一つ一つのセンスの良さに一々ニヤニヤしてしまう。
個性的なキャラクターも非常に魅力的。
特に、ジョン・ウィックに護衛対象を殺され復讐に燃える男カシアンと、
今回のターゲットの側近であり手話で会話する女アレスが良かった。
他にもコンチネンタル・ホテルのオーナーや裏社会の情報屋キング等、
それぞれを主役として独立した作品を作れそうな程である。
■チャド・スタエルスキと格闘術
本作の監督チャド・スタエルスキは、
元々スタントマンやスタントコーディネーターとして活躍していた人物。
「マトリックス」等ではキアヌのスタント役も経験している。
更に、過去には「イノサント・アカデミー」という武術組織に所属していたそうだ。
※イノサント・アカデミー:
ブルース・リー師祖からジークンドーを継承するダン・イノサント師父が主宰する武術・
現在は「87イレブン・アクション・デザイン」という、
スタントマン等を集めた会社を作っており、
映画監督である以前に筋金入りの格闘家でありスタントマンなのである。
監督の技術や知識と、キアヌと長年組んでいる相性の良さが、
ジョン・ウィックの超絶かつ丁寧なアクションを生み出しているのだと思う。
ちなみに、前作では共同監督であったデヴィット・リーチも同じような経歴。
ジョン・ウィック2上映前に、
デヴィット・リーチ監督作品「アトミック・ブロンド」の予告編が流れていたが、
こちらもゴリゴリのアクション映画のようだ。
■多少粗さも感じる内容
所々、「あれっ、いつの間にそこへ移動したの?」
といった引っかかりを感じて集中力を削いでしまうシーンが有った事と、
122分というこの手の映画にしては長めの上映時間が少しつらかった。
前作が101分だったのと比較すると
20分も増えているのはよりタップリ楽しめて嬉しい半面、
前作に比べるとちょっとまとまりが無いなぁ、という印象も受けてしまった。
敵の殺し屋やボディーガードが魅力タップリな反面、
最終目標である今回の悪役がイマイチ魅力が無かった事も影響しているかもしれない。
■そして3作目へ
ジョン・ウィックは既に3作目を企画中との事で、
次はどんなアクションを見せてくれるか非常に楽しみである。
キアヌ・リーブスはもう52歳だが、
スタローンなんて70歳を超えてもアクション映画をやっているので、
きっと大丈夫だろう……。