■総評
・今までにない、西部劇のように渋くて格好良いアメコミ映画
・アメコミ映画最高傑作の一つと言っても過言ではない完成度
・「シリーズ最終章」としてこれ以上無く素晴らしい作品
・R15指定による過激な人体破壊描写によるインパクトが凄い
・良くも悪くもX-MEN(ウルヴァリン)シリーズファンの為の映画
■目次
■ウルヴァリン最終章
2000年に公開された「X-MEN」から17年。
シリーズ作品は出来不出来が激しかったが、
いかなる時もそれを支え続けた
ヒュー・ジャックマン(ウルヴァリン)がついにシリーズ引退。
この事実だけで悲しくなってしまうが、
「ローガン」は本当に素晴らしい作品で、
鑑賞中に3回は泣いてしまった。
まず、チャールズ(プロフェッサーX)が
加齢によりボケかけており能力の制御すらままならい、
という状態を見てるだけで泣けてくる。
ミュータントはほぼ存在しなくなったという世界であり、
度重なる戦いに疲れたローガンも半ば人生引退気味で、
ボケ老人となりつつあるチャールズの介護を続ける日々。
そう、「人間ドラマ」に重点を置いて描いているのが本作。
派手なCGとアクションを駆使した今までのシリーズとは真逆で、
徹底的にリアルで渋い、西部劇のような映画になっている。
荒涼とした空気感で、重く物悲しい音楽が目立つ。
■激しい暴力描写
と言われると「地味でつまらなさそう」と思われそうだが、
R15指定にした事で暴力描写が格段にパワーアップしており、
ローガン(とローラ)の爪による人体破壊のインパクトが凄まじい。
特にローラのアクションが鮮烈だ。
キック・アスのヒット・ガール並、いや、それ以上に暴れまわって殺しまくる。
そしてローガンはそれを見てかつての自分を思い出し、
何もかも失い諦めつつ有った人生を嘆きブチ切れながらも、
ローラの為に奮闘するのだ。
シリーズを見続けていた身としては、
暴れまわるローガンとローラのアクションに爽快感を覚えつつも、
常に悲しさや寂しさを感じる事になる。
■チャールズとローガン、そしてローラ
この作品はチャールズ、ローガン、ローラの3人での旅が中心となる。
この3人の親子のような関係がまた見ていて泣けてくる。
ローガンにとって、
チャールズは自身を導いてきた父親のような存在であるし、
ローラは自身の超人的な遺伝子を受け継いでいる娘のような存在だ。
ローガンはチャールズの介護をしながら、幼いローラを導かなければならない。
この、息子であり父親でもあるローガンの姿は、
多くの観客が自分の事のように感じ身につまされる事になると思う。
しかも、チャールズは「世界最強」とも言える能力を持ちながら
ボケかけて度々能力が暴走してしまうという非常に危険な存在だし、
ローラは全く常識を知らず感情のままに行動するのでやはり危険人物だ。
更に、ローガンは治癒能力が衰え、
体内のアダマンチウムが毒となり体を蝕んでいる。
精神的にも肉体的にも常にボロボロだ。
あらゆる面で悲惨な状況であり、あまりにも辛すぎて、また泣けてくる。
しかし、そんな中でもローガンは、そしてチャールズは、
かつてX-MENとして、世界を守ってきたヒーローとして、
成すべきことを成そうとするのだ。
本作はストーリーもアクションも素晴らしく最高に楽しめたが、
この3人に焦点を絞って描いた事が良い結果に繋がったと思う。
多数の超人が暴れまわるX-MENらしさが無いの寂しいが、
しかしその寂しさもこの作品の魅力になっている。
■X-MENファンの大人が見て楽しむ映画
本作がX-MENファン向けの作品である事は間違いないし、
更に言うと「子供が見ても楽しめない、大人が見る人間ドラマ」という印象だ。
そもそもR15指定なので、15歳未満は見れないのだが。
X-MENを見て育ち大人となった人間が、
衰えたローガンの奮闘を見て涙するという、
シリーズの積み重ねを最大限に生かした傑作だと思う。
しかし、フューチャー&パストのラストが大好きな身としては、
ローガンの世界観は「あの頑張りは一体何だったんだ」と思わなくもないが……。
ただ、それに関しては、
パンフレットに載っているヒュー・ジャックマンのインタビューによると、
「以前のX-MENシリーズの歴史とか年表に必ずしも関連しない作品」
であるとの事だ。
X-MEN関連作品自体は続くようなので、
ミュータント達が生き残り、
活躍しているパラレルワールドが描かれる事を期待したい。