■総評
・カーアクション好き、音楽好きは必見
・音楽とアクションのシンクロ具合が前代未聞の素晴らしさ
・個性的で魅力の有るキャラクター
・映画オタクをニヤリとさせる演出の数々
■エドガー・ライト監督作品の集大成
エドガー・ライト監督はこれまでにも、
「音楽と映像をシンクロさせる」手法で印象的なシーンを作っていた。
ショーン・オブ・ザ・デッドでQUEENのDon't Stop Me Nowが流れたシーンや、
ワールズ・エンドでドアーズのAlabama Songが流れたシーン等だ。
(上記の作品を観た事のない人の為に、音楽のみをyoutubeから転載)
これらは映画の中の1シーンで行っていた手法であったが、
ベイビー・ドライバーはほぼ全編に渡ってこれをやっている。
「カー・アクション版のラ・ラ・ランド」とも言われているが、
音楽と映像がシンクロしていると感じた。
銃声、ドアを開け閉めする音、ワイパーの動きと音など、
あらゆる動きや音が音楽に合わさるよう作られているのだ。
本当に観ていて気持ちの良い、他に類を見ない映画だった。
■魅力的なキャラクター達
銀行強盗集団を率いる悪人役のケヴィン・スペイシー、
後先考えず暴走し場を掻き回すジェイミー・フォックス、
冷酷だが主人公に優しさも見せるジョン・ハム、
など個性豊かで危ない犯罪者集団が非常に魅力的。
特にケヴィン・スペイシーはやはり悪人をやっていると輝く。
そして、卓越したドライビングテクニックを持ち、
普段は大人しいがいざとなれば逞しいという主人公役の
アンセル・エルゴートが凄く良かった。
ありがちな設定では有る(頭文字Dの主人公藤原拓海にそっくりだ)が、
アンセル・エルゴートの童顔とにじみ出る危ない雰囲気が、
生身の俳優が演じるからこその魅力を生み出していた。
■映画オタクを喜ばせる演出の数々
主人公がTVのチャンネルを次々と変える際に色々な映画のシーンが一瞬映るのだが、
そこで流れる台詞が主人公に大きな影響を与えたり、後々ギャグとして生かされたりする。
それらの作品自体を知らなくても問題なく楽しめるだろうが、
知っているとニヤリと出来る演出がたまらない。
元々パロディ系の作品で人気が出た監督であるが、
こういった他作品からの引用やパロディの使い方が更に上手くなっていると感じた。
■他に類を見ない傑作
エドガー・ライト独特の演出を極めた、他に比較するような作品がないという、
現代においては中々お目にかかれない傑作であった。
今は洋画業界もそれなりの規模の作品となると、
原作となる小説やコミックが有るか、
昔から続いているシリーズ作品がほとんどである。
本作のように完全オリジナルの新作で、
そして最高に面白い、というのは貴重な存在だ。