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【映画感想・解説】スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム【ネタバレ有】

■総評

MCUとしてもスパイダーマンとしても完璧

・これ以上はネタバレで何も言えないので、続きで

 

※ディズニープラスのドラマ「ホークアイ」等、他MCU作品のネタバレも有るので、

 注意して記事を見てください。

 

 

■サプライズその1

まず開始後すぐに大きなサプライズが有った。

 

前作でミステリオに正体をばらされテロリスト扱いされたピーター。

保安局につかまり、MJやネッドも尋問を受ける。

 

その際に「弁護士を」というセリフが何度も出て強調されていたので、

「もしや……?」と思ったが、やはり登場した。

 

そう、盲目の弁護士マードックデアデビルである。

 

証拠不十分でピーターの釈放を勝ち取り、

ピーターの家で集まって会話するシーンでさらっと姿を現した。

 

ドラマ「ホークアイ」ではキングピンの登場を匂わせてかなり引っ張っていたので、

デアデビルがこんなにあっさり登場したのに思わず「おおっ」と声が出てしまった。

 

窓の外から投げ入れられた石をマードックが後ろを向いたままキャッチするシーンもあり、

知らない人でも「ただ者ではない」事が分かる演出をしていた。

 

これまでネットフリックスで展開していたマーベルドラマは

MCUに直接的な関係はなかったが、

今回ついにMCUの映画に登場したのは非常に大きな意味があると思う。

 

が、とは言え、今回の登場はこれだけ。

今後のMCUでの活躍に期待がかかる。

 

■歴代ヴィランとの戦い、そしてスパイダーマンvsDr.ストレンジ

さて、その後はおおよそ予告編で予想できた内容が進んでいく。

 

ストレンジの魔術が失敗した影響で、

スパイダーマンの正体を知る別次元のヴィランが引き寄せられてしまう。

 

その際にスパイダーマンサンドマンvsエレクトロが有ったりと、

もうスパイダーマンファンにはたまらない展開だ。

 

一度はヴィラン達を捕まえることに成功し、

ストレンジが魔術をかけなおして元の世界に戻そうとする。

 

が、ヴィランたちの会話から、

彼らがスパイダーマンと戦い死ぬ」運命にある事を知ったピーター。

 

死ぬと分かっている人間を見捨てる事は出来ないと、

ストレンジから魔術用の箱を奪って逃走。

 

ここからスパイダーマンとストレンジの

見応え抜群超壮大な追いかけっこがスタート。

 

こういうヒーロー同士のバトルはやはりテンションが上がる。

 

なんやかんやあって、

ミラー空間の法則を数学的に割り出したピーターがストレンジを糸で捕獲。

 

箱とストレンジの指輪を奪い、ストレンジをミラー空間に閉じ込めて脱出。

 

ヴィラン達との協力、そして

ピーターはヴィラン達が皆肉体的・精神的に大きな変化をしているため、

それを治療してから送り返せば助かるはずだと計画を立てる。

 

避難先であるハッピーの部屋に置いてあった、

トニー・スタークの残したハイテク装置(ファー・フロム・ホームでも登場)を使い、

まずはDr.オクトパスの治療に成功する。

 

ここで、その装置の動力源である

アーク・リアクターを見たエレクトロのテンションの上がり方が可愛いと同時に、

アーク・リアクター欲しさに裏切るのでは?という不穏さもたまらなかった。

 

そしてそれは、グリーンゴブリン=ノーマン・オズボーンの裏切りで現実になる。

 

それまで協力的だったノーマンの意識をグリーンゴブリンが乗っ取り、

治療を拒んで攻撃を仕掛けてくる。

それに同調してエレクトロも治療を拒んでアーク・リアクターを奪取して逃走。

 

ヴィラン達も騒動に乗じて姿を消してしまう。

 

そして、その騒乱の中、

なんとメイおばさんがグリーン・ゴブリンに殺害されてしまう。

 

前作でトニー・スタークの死をピーターが乗り越える話をやったのに、

まさか今回メイおばさんまで死んでしまうのは全くの予想外だった。

 

メイおばさんは怪我をした後も気丈に振舞い元気そうに見せていたので、

「ああ、やっぱりここで死ぬわけないよな」と安心しきったので、

本当に驚いた。

 

■サプライズその2

メイおばさんを失ったショックでピーターは姿を消してしまう。

 

MJとネッドはピーターの身を案じていたところ、

ネッドの「ピーターに会いたい」という言葉に反応して魔術が発動。

 

ポータルが開き、その向こうにはスパイダーマンの姿が。

 

しかし、妙に陽気な様子で駆けつけてくるスパイダーマン

メイおばさんを失って悲嘆に暮れているピーターとは思えない。

 

そしてマスクを取ったその姿が、そう、

アメイジングスパイダーマンアンドリュー・ガーフィールドである!!

 

ここでも思わず「おおお」と声にならない声が漏れ出てしまった。

 

その後は初代スパイダーマントビー・マグワイアも登場。

 

この二人は映画公開前に何度も「僕たちは登場しない」と断言し、

出演を噂するような報道もほとんどなかった為、

「出てとしてもちょい役かな」と思っていたが、そんな事はなかった。

 

この後、二人でトムホスパイダーマンを励まし、

スパイダーマン3人でヴィラン達との決戦に挑む展開は、

もう涙なしには見られなかった。

 

「メイおばさんを失った悲しみは皆にはわからない!」トム・ホランドが言うと、

トビー・マグワイア「僕はベンおじさんを自分のせいで失った」と言い、

アンドリュー・ガーフィールド「グウェンを救えなかった」と嘆く。

 

スパイダーマン達が抱える悲しみの共有は、

ちょっと笑えると共にヒーローの抱える責任の重さを痛感させられる。

 

トビー・マグワイア

「僕は宇宙から来た黒い敵(ヴェノム)と戦ったことが有る」と言い、

トムホが「僕は宇宙に行って戦ったよ!」と言うと、

アンドリュー・ガーフィールドが「僕の最大の敵はサイのスーツを着たロシア人だった、しょぼいよね」と嘆く。

 

そこでトビー・マグワイア

「そんな事は無い!君はアメイジングだよ!」と声をかけるのも、

最高に笑えて面白かった。

 

「大になる力には」「大いなる責任が伴う」

というセリフをスパイダーマン同士で言うのは感動的だった。

 

スパイダーマン3人のやりとりは本当に本当に最高。

 

■最終決戦

そして、3人で知恵を寄せ合って、再度ヴィラン達を治す機械や薬を開発。

キャプテン・アメリカの盾を持たせる為に工事中の自由の女神ヴィラン達を誘導する。

 

最初は息が合わず連携が取れないスパイダーマン達。

 

トビー・マグワイアアンドリュー・ガーフィールド

「(他のヒーローと)連携して戦った事がない!」と言うので、

アベンジャーズとしての経験があるトムホが大まかな指示を出し、

最終的には「スパイダームズムズを信じて戦おう!」と結論付けるのも笑えた。

 

最終決戦で一番感動したのは、

落下したMJをアンドリュー・ガーフィールドが助けたシーンだ。

 

最初にトムホが飛び出したもののグリーンゴブリンに邪魔をされ、

その後に飛び出したアンドリュー・ガーフィールドがMJをナイスキャッチ。

 

この際のアンドリュー・ガーフィールドの嬉しそうで、かつ、

寂しそうでもある何とも言えない表情の演技が素晴らしかった。

 

グウェンを救えず終わってしまったアメイジングスパイダーマン2を思い返し、

「打ち切られたアメイジングスパイダーマンも、これで完結する事が出来たんだな」

と思えて泣いてしまった。

 

Dr.オクトパスは裏切った演技をしてエレクトロからアーク・リアクターを奪う。

追い求めていた膨大なエネルギーを発するアーク・リアクターを自身の物にする事はなく、

スパイダーマンに任せるという改心を見せたのも感動的。

 

リザードマン、サンドマンも死ぬことなく元の体に戻ることが出来た。

 

怒りに駆られてグリーン・ゴブリンを殺そうとしたトムホを、

初代スパイダーマンであるトビー・マグワイアが止めるのも、

予想できた流れではあるけど滅茶苦茶良いシーンだった。

 

初代スパイダーマンアメイジングスパイダーマン

続編の構想はあったのに打ち切られてしまい、

宙ぶらりんな状態のまま終わってしまった。

 

かつてスパイダーマン達が救えなかったヴィラン達を今回救う事で、

以前の2つのシリーズにもしっかり決着をつけた脚本の完成度の高さが本当に凄い。

 

■最後の決断

なんやかんやあった中でDr.ストレンジもミラー空間から帰還。

魔術を再実行しようとしたが、

魔術を行使するための箱をグリーンゴブリンに破壊されてしまう。

 

他の次元からもさらにスパイダーマンを知るヴィランが押し寄せてきて、

次元が滅茶苦茶になってしまう大ピンチ。

 

そこでピーターは、

やはり「ピーター・パーカーの存在をこの世界の人たちの記憶から消す」事を選ぶ。

そうする事で、自らが招いたこの騒動を終わらせる事が出来る。

 

そうして、

他の二人のスパイダーマンヴィラン達が救われて元の世界に帰る中、

トムホスパイダーマンは孤独な世界に取り残されて終わる。

 

トムホスパイダーマンが起こした大騒動の責任を取り、

他のスパイダーマンの責任まで背負い込んで一人になったピータ・パーカーは凄くかわいそうだが、

しかし、決して悲劇的ではなく、ピーターは前向きに生きていく姿を示していた。

 

大いなる力には、大いなる責任が伴う。

この言葉の素晴らしさと重さを改めて痛感した。

 

■歴代スパイダーマンとして、MCUとして、スパイダーマンユニバースとして

いや、それにしても、

トムホスパイダーマンは父親のような存在であったトニー・スタークを失い、

メイおばさんを失い、親友も彼女も記憶を失ってしまったというのは、

歴代のスパイダーマンの中でも圧倒的に悲惨である……。

 

でも

MCU世界に残りつつ」

MCU世界の住人はピーター・パーカーの記憶を失った」という、

マーベル側にもSONY側にも配慮して今後どうにでも話を展開できるよう決着させたのは、

神がかったクオリティの脚本だなあとメタな視点でも感動した。

 

一応次のスパイダーマン三部作も予定はされているようだが、

この終わり方であればMCUアベンジャーズ)と関わらなくても不自然ではないし、

何らかの理由で記憶が戻ったとかでMCUに再参戦する事も出来る。

 

ちなみに、オマケ映像ではMCU世界にワープしてきたエディ&ヴェノムが登場。

……が、ピーターの決断で別次元から来た人物が元の世界に帰ったため、

エディ&ヴェノムも「来たばっかりなのにもう戻るのかよ!」と元の世界に帰っていった。

 

が、ヴェノムの一部がMCU世界に残った不穏な描写を残して終了。

 

これも、このヴェノムの欠片から新たなヴェノムがMCU世界に現れても良いし、

自分の欠片をたどってエディ&ヴェノムがMCU世界に参戦しても良さそうだ。

 

歴代のスパイダーマン映画としても、

MCUとしても、

今後展開されるであろうMCUとは別のSONY独自のスパイダーマンユニバースとしても、

各方面に配慮した完璧な話の展開と決着の仕方だった。

 

もう本当に凄すぎる。

どうやったらここまで完成度の高い話を作れるのか、ちょっと理解できない。

 

歴代スパイダーマンの映画やMCU作品を見ている事が前提にはなるが、

間違いなく人生最高の映画の一本になった。

 

そして、映画スパイダーマンの生みの親であるサム・ライミが、

MCU次回作であるドクターストレンジ:マルチバース・オブ・マッドネスを手掛けるというのも、

それだけで感涙ものだ。