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【映画感想】ゴジラ-1.0(マイナスワン)【ネタバレ有り】

■総評(GOOD)

終戦直後が舞台の各種設定、人間ドラマを含めたストーリーが面白い

・シリーズ屈指の迫力、興奮

・とにかくゴジラが恐ろしく、人が虫けらのように死んでいく容赦ない描写

・それに伴う緊張感、絶望感が凄い

・ほぼ違和感を感じる事がないハイレベルなCG

 

■総評(BAD)

・邦画にありがちな人間ドラマパートで中だるみを感じる人も居そう

 

 

終戦直後という設定がゴジラにドはまりしている

本作で特筆すべきは、やはり終戦直後という舞台設定だと思う。

 

監督の山崎貴は「永遠の0」や「海賊とよばれた男」「アルキメデスの大戦」など、

戦中や戦後すぐを舞台とした映画で高い評価を得てきている。

 

そういった経験をぶち込んでおり、

・特攻隊で生き残ってしまった主人公

・家族を失い戦争孤児を拾ったヒロイン

・特攻隊員を送り出してきた整備士

終戦直後にまた破壊されてしまう街

・大戦を生き延びた軍艦や戦闘機の活躍

など、様々な要素が「ゴジラ」に効果的に結びついている。

 

まず、主人公の乗る機雷除去船がゴジラに襲われもう駄目だ!というタイミングで、

重巡高雄が助けに来たシーンの熱さが最高。

しかしその高雄もあっという間にゴジラに破壊されてしまう絶望感。

 

そして、駆逐艦雪風・響や実験機であった戦闘機震電の活躍。

 

人間に限らず「戦争で生き残ってしまった」兵器達とゴジラの戦いは、

なかなか言語化するのが難しい特別な感情を呼び起こしてくれた。

 

そして主人公の放つ「俺の戦争がまだ終わっていない」という台詞と、

「今度こそ日本を守る」ためのゴジラとの戦い、

戦争映画として見ても非常に完成度が高かったと思う。

 

恐怖の対象としてのゴジラ

淡々と街を蹂躙していく「シン・ゴジラ」のゴジラも恐ろしかったが、

シン・ゴジラ」では人の死を直接的に描くシーンはあまり無かった。

 

印象に残っているのは、マンションで逃げ遅れた家族が、

ゴジラの蹂躙による建物倒壊に巻き込まれるシーンくらいだろうか?

 

しかし今回は、とにかく人が死んでいっているのが分かる。

人間に踏み潰される蟻の大群が如く、容赦なく蹴散らされていく。

 

さらに、銀座での熱線放射シーンは凄まじかった。

まさに原爆が投下されたような描写と威力で、一瞬で街が消し飛ぶ。

 

熱線でヒロインが吹き飛ばされて、

ああ、これはどう見ても死んだな、と思った時の絶望感。

(最終的に生き残っていたが……これについては後述。)

 

間違いなく、これまでのシリーズで一番恐ろしいゴジラで、

だからこそ最高に格好良いゴジラだった。

 

CGのレベルも非常に高く、ハリウッド作品と比べて遜色ない出来だった。

 

もっとゴジラが暴れるシーンを見たかったなとは思うが、

邦画でここまでのものを作れた事が素晴らしいとも感じる。

 

人間ドラマパートの必要性

序盤など特に朝ドラのようなゆるさの人間ドラマが描かれ、

その後も主人公が打ちのめされるシーンが繰り返し描写される。

 

確かに人間ドラマパートが多いとは感じるが、

しかし過去のゴジラシリーズはとってつけたような適当な人間ドラマパートは有った。

 

良くも悪くも山崎貴らしい人間ドラマパートは賛否が出るだろうが、

個人的には終戦直後を描いたストーリーを楽しむ事が出来た。

 

それが有るからこそ、ゴジラが暴れるシーンの緊張感・絶望感が際立つ。

 

ストーリー、人物描写、ゴジラとの戦闘等、

作品全体を見た時に「歴代ゴジラ最高傑作、いや、邦画最高傑作かもしれない」

と思えるほどの満足感。

 

シン・ゴジラ」の後に日本でゴジラを作るという事自体が、

とてつもなく高いハードルで尋常じゃないプレッシャーも有ったに違いない。

 

それを引き受け、これほどの傑作を作った山崎貴監督には、

心の底から敬意を評したい。

 

ラストシーンについて

ただ、個人的には、ヒロインが生き残っていたのは非常に残念だった。

そこは容赦なく死んだまま(もしくは行方不明のまま)にして欲しかった。

 

その方が絶望を乗り越え決意を固めた主人公が際立つし、

ゴジラ暴力性、理不尽さもより強く印象に残ったと思う。

 

どう見ても生き残るのは無理だろうという吹き飛ばされ方だったが、

ゴジラ細胞に侵食されておりそれによって肉体が再生した?」と予想できる妙な痣が残っている、

という描写では有った。

 

が、仮にその予想通りだとして人間にゴジラ細胞が定着して云々というのは、

この作品のリアリティレベルからかけ離れているように感じるし、

そうでなければやっぱり「あれで生き残るのは無理だろう」となる。

 

続編が有るとして、ゴジラ細胞に侵食されたヒロインを描くとすると、

それは作品としてノイズにしかならず余計な要素になりそうだなあ、と思う。

 

とは言えこうしないとあまりにも主人公が不憫すぎてバッドエンドなので、

多くの人が楽しめるエンタメ作品としては正解なのかな……とも感じるので難しいところだ。