■総評
・スーパーヒーロー物とフィルム・ノワールが融合した斬新な作品
・イタリア映画らしい芸術性とアクションの絶妙なアンバランスさが気持ち良い
・冴えないオッサンが厳しい現実の中もがく様子が胸を打つ
・敵となるキャラクターのイカレ具合が最高
・ハリウッドのスーパーヒーロー物に慣れていると非常に地味に感じるが、
その地味さを楽しむ作品
■目次
■地味でリアルな超人映画
ローガンに続き、これもまた今までに見た事のないヒーロー物だった。
ローガンも地味でリアルな路線だったが、本作はそれ以上に地味でリアル。
主人公は友達も家族もおらず、ちんけな犯罪で小金を稼いでいるチンピラ。
とある出来事で超人的な力を手に入れるも、
最初はATM強盗といった犯罪で金を手に入れようとする有様。
そんな中、鋼鉄ジーグにあこがれる女性と仲が深まり、
少しずつ正義に目覚めていくといった具合だ。
ストーリー自体はありきたりなのだが、その見せ方が非常に独特。
フィルム・ノワールらしい退廃的で閉塞感溢れる犯罪映画に、
スーパーヒーロー(ダークヒーローと言った方が良いかもしれない)
が混ざってくるような流れだ。
■冴えないオッサン主人公とインパクト抜群の敵
しかし、スーパーヒーローといっても、正直言ってそんなに強くはない。
キャプテン・アメリカよりも弱いくらいだろう。
なんならワイルド・スピードに出てくるドウェイン・ジョンソンの方が強そうだ。
しかし、そんな主人公役である
クラウディオ・サンタマリアの冴えないオッサン具合がたまらない。
あんまりにも見た目が冴えないので、
公式サイトやポスターではフードを被ってマスクをしている姿ばかりだ。
しかし、その着ているパーカーもダサくてやっぱり冴えない。
【とてもスーパーヒーロには見えないクラウディオ・サンタマリア】
【ワイルド・スピードでターミネーターばりの存在感を放つドウェイン・ジョンソン】
大した力は持っていないので、そこまで目覚ましい活躍もしない。
しかし、だからこそ「超人的な力を手に入れた時、どう行動するのか?」という、
ヒーロー物のお約束的な展開に感情移入できて楽しめる。
対象的に、敵となるキャラクターは非常に強烈。
まさにイタリア人のイケメンといった顔立ちなのだが、
言動が完全にイカれており、
なんだか良く分からない気持ち悪い化粧も相まってインパクト抜群。
(丁度良い画像が見つからなかった。是非とも実際に鑑賞して確認して欲しい。)
やはり敵キャラクターが魅力的だと、
それだけで作品の魅力がグンと上がる。
■良くも悪くも、地味
が、やはり良くも悪くも地味だ。
アクションシーンは正直言って盛り上がりに欠ける。
そもそもイタリア映画はアクションが得意ではないだろうし、
予算の都合や作品の方向性も有るのだろうが、
それにしてももうちょっと派手さが欲しかった。
スーパーヒーロ物を期待して見に行くと、
肩透かしを食らうかもしれない。
とは言え、その地味さもこの作品の魅力だとは思う。
イタリア映画らしい芸術的な映像と雰囲気をギリギリ壊さない、
絶妙なバランスだったとも感じる。
海外ではかなり評価が高かったようだし、とても楽しめたので、
ぜひとも続編を作って欲しい作品だ。
■鋼鉄ジーグについて
ちなみに、タイトルは原題を直訳したもの。
知らなくても問題なく楽しめると思う。
少なくとも、僕自身鋼鉄ジーグは全く知らなかったが楽しめた。
(イタリアではそんなに人気のある作品なのだろうか?)
どうやら、子供向けアニメのように見えて、
かなり過酷で悲劇的な内容であるらしい。
永井豪原作なので、なんとなく想像はつくが……。