椅子と椅子の間から観る

映画の感想・解説やゲームの話

【映画感想】孤狼の血【ネタバレ無し】

■総評(GOOD)

・今時の邦画大作では珍しい、暴力的で男臭い映画

・思わず笑いが出るほど過激な描写が凄まじい

・豪華俳優陣の熱の入った演技がインパクト大

・オール広島ロケというだけ有り、セット感が無く雰囲気が素晴らしい

・原作からの改変は概ね映画用に上手く作用していた

 

■総評(BAD)

・音質が悪く、声が聞き取れない事が多い

・終盤に演出がしつこい場面が多く、かえって冷めてしまう

 

 

とにかく熱量が凄い

これ程までに暴力的で、男臭くて、モラルに欠ける作品を、

今の時代に邦画が大作として製作・公開したという事が驚きである。

 

アウトレイジ北野武らしい淡々とした描写が特徴的であったが、

この作品はとにかく暑苦しい。それが素晴らしい。

 

思わず笑ってしまうくらいの暴力的な描写も徹底している。

実際、劇場では暴力シーンで度々笑いが起きていた程だ。

 

『地上波では絶対無理な、映画ならではの魅力』を制作陣も売り文句にしていたが、

まさにその通りの過激でアウトローな映画になっている。

 

ただし、台詞が聞き取りづらい事が多いのは難点だった。

呉弁で怒鳴るシーンが多い上にBGMと台詞の音量バランスが悪いので、

広島出身でない人だと半分も聞き取れないのでは?と思うほどであった。

 

僕自身は呉市の隣で生まれ育っており、

この映画も呉に見に行った程なので気になったのは音量バランスだけだったが……。

 

それと、邦画でありがちな、

終盤でしつこい演出を何度も入れてくるのには萎えてしまった。

長いスローモーションで俳優の顔をねっとり映す感じのアレである。

 

魅力的な出演陣

どの俳優も非常に魅力的で、役所広司は勿論、

松坂桃李の目が血走りよだれを垂らすような鬼気迫る演技が印象的。

 

江口洋介演じるヤクザも迫力満点だったし、

音尾琢真の小物チンピラっぷりや、

ピエール瀧の右翼大物のハマりっぷりなど、

俳優の良さを語るだけでキリがない。

 

真木よう子MEGUMIといった女性陣の”大人の色気”も特徴的だった。

 

それらの人物の思惑が絡み合う人間ドラマも非常に濃厚。

容赦なく過激な描写をするからこそ浮き出るドラマの良さが有ったように思う。

 

オール広島ロケの魅力

ほぼ全編を呉で撮影し、その他も広島市等で撮影したという、

「オール広島ロケ」はこの映画に大きく貢献していたと思う。

 

呉の特徴的な地形はアニメ映画「この世界の片隅に」でも印象的であったし、

今もなお昭和の空気が残る呉でのロケは、

この映画の魅力を大きく引き上げているように感じた。

 

ちなみに、前述したように呉に近い場所に住んでいるので、

呉ポポロシアターという呉に唯一存在する映画館に観に行った。

 

シン・ゴジラを品川で鑑賞した時もそうだったが、

やはり舞台となる土地で鑑賞するのは格別な楽しさが有る。

地元の人にしか分からないネタで笑ったり、どよめいたりする空気がたまらない。

 

また、呉ポポロシアターは今時珍しい「自由席」で、

スタッフロールの段階で人の出入りが始まる雑な感じは、

今では中々お目にかかれない貴重な体験である。

 

原作との違いについて

ネタバレを避けての感想なので詳しくは書けないが、

原作と違う箇所が多く有った事に関しては、

ほぼ好意的、または「2時間にまとめるには仕方ない」と思えた。

 

ただし、一つだけ、そこは原作と変えちゃ駄目だろうと感じるシーンも有った。

というより、変えるならもうちょっと補足の説明が欲しかった、といった所だろうか。

 

「こういう事だろうな」と脳内補完は可能なものの、

この作品においてかなり重要なポイントなので描写不足が気になった。

 

とは言え物語の結末自体はむしろ原作よりも好きだったので、

プラスマイナスで言えば大きくプラスというのが個人的な印象。

 

非常に過激で暴力的な映画なので誰にでもオススメ出来るわけではないが、

最近の邦画ってつまらないよね、と言う人に是非見てもらいたい映画である。

 

 

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村