■総評(GOOD)
・映像と音楽が最高にスタイリッシュ
・とにかくシャーリーズ・セロンが格好良い
■総評(BAD)
・妙に話の構造が複雑で集中して見れない
・あまりアクションに見所がない
■笑ってしまう程にスタイリッシュ
映像の美しさへのこだわりが凄まじい作品だった。
なんだそのホテルは!と突っ込みたくなるスタイリッシュな部屋、
シーンが変わる度に服を着替えているシャーリーズ・セロン、
シーンごとに変わる映像の色合いなど、
ちょっと見た事が無いくらい過剰なスタイリッシュさ。
格好良ければ多少リアリティが損なわれても良いんだよ!
シャーリーズ・セロンの綺麗さと格好良い所を見せたいんだよ!
という意気込みを感じた。
■鳥肌が立つほど格好良い音楽
映像以上に、音楽の格好良さが素晴らしい。
80年代のポップ・ロックソングがガンガン流れ、
時にはミスマッチなんじゃないかという選曲がまた最高に良かったりする。
ロンドン・コーリングが流れるシーンは、
あまりの格好良さに本当に鳥肌が立った。
■意外と本格的なスパイ映画、ゆえの欠点
監督の経歴(ジョン・ウィック一作目の共同監督)や予告編の雰囲気から、
アクションに全振りの作品かと思っていたら、
これが意外にも本格的なスパイ物であった。
取調中の主人公が事件を回想していくというのが基本的な流れで、
その上でスパイ同士が騙し合い
MI6、CIA、KGBといった組織が暗躍する話になっており、
複雑な話の構造と登場人物の多さからストーリー展開に付いていくのがやや大変だった。
そのせいでスタイリッシュな映像やアクションに魅入る事が出来ず、
集中力を欠いてしまう事が多いのが非常に気になった。
一々取調中のシーンに戻るせいで流れが途切れるのでテンポが悪いし、
話がぶった切られるのでストーリーを追うのも面倒くさくなっていた。
この作品において、回想方式を採用したのは悪手だったように思う。
また、アクションシーンの数自体そんなに多くなく、
そのアクションもどこかで見たような動きや泥臭い殴り合いが多いので、
あまり面白みを感じなかった。
■ストーリー上での根本的な欠陥(ネタバレあり)
映画冒頭で「これはベルリンの壁崩壊の話、ではない!」と提示されるが、
結局「主人公(CIA)の企みでベルリンの壁崩壊に繋がった」というオチになるのは反則だと思う。
「ベルリンの壁崩壊とは関係ないんだな」
という前提が刷り込まれた状態で鑑賞する事になるので、
見ていてどうにも「これじゃない」という印象を受けてしまう。
素直に「ベルリンの壁崩壊の裏で暗躍したスパイ達」という煽りで良かっただろう。
またシャーリーズ・セロンがMI6、KGB、CIAのトリプル・スパイだった、
というオチも「だから何なの?」という思いが強かった。
劇中でMI6以外の組織の存在感が薄かったせいもあるし、
前述した通り「ベルリンの壁崩壊ではない」と言ったくせに
「ベルリンの壁崩壊を招いたトリプル・スパイでした」と言われても、
はぁ?としか思えない。
■惜しいキャラクター達(ネタバレあり)
ジェームズ・マカヴォイが演じる
イカれたスパイは中々に魅力的なキャラクターだったが、
過去や背後関係が一切語られない
(それとなく何かを想像させるような描写もない)ので、
何が動機で最終的にどうしたかったのか良く分からないまま終わってしまった。
MI6を裏切った理由は最後の
「俺はベルリンが大好きだ!」といった台詞に現れていたのだと思うが、
何でそんなにベルリンにこだわっていたのか理解できなかった。
そして、個人的に非常に残念だったのが、
ソフィア・ブテラを起用しているのに
ソフィア・ブテラにはアクションシーンが用意されていなかった事だ。
キングスマンやザ・マミーでのアクションで
強烈なインパクトを残している女優だけに、
本作でも魅力的なアクションが披露されるのを期待していた。
もっとも、
これは僕が勝手に期待して予想と違ったからと文句を言っているだけなのだが、
にしても「ソフィア・ブテラじゃなくて良かったんじゃない?」と思ってしまう。
妖艶で魅力的なキャラクターでは有ったし、
シャーリーズ・セロンとソフィア・ブテラの濃厚なレズシーンは見所だったが……。
1シーンでも良いからソフィア・ブテラのアクションシーンが有れば、
映画全体への印象がだいぶ変わっていたのではないかと思う。
余りにも「シャーリーズ・セロンの引き立て役」に成り過ぎているように感じた。
あまり興行収入も評判も良くないようなので続編は無さそうだが、
非常に魅力的な箇所はたくさん有ったので、
監督がまた新しい映画を作ってくれるのを期待したい。