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【Netflix感想】日本沈没2020【ややネタバレあり】

■総評(GOOD)

・序盤は主人公視点で話が進む為、情報不足で振り回される状況に感情移入出来る

・災害時にSNS等を駆使する現代的な描写

・序盤の緊張感、災害とサバイバルの恐さ

・(序盤は)湯浅監督独特の大げさな表現がなく、あっさりとした描写が作品内容に合っている

 

■総評(BAD)

・中盤の中だるみ、終盤のご都合主義過ぎる展開が残念

・終盤は湯浅監督独特の大げさな表現がしつこい

・銃を持っている人が度々出てきてリアリティがない

 

 

序盤は名作 

良くも悪くも非常に独特な感性を発揮する湯浅監督による

日本沈没」のアニメーション作品がNetflixで配信開始された。

 

個人的には湯浅監督作品は苦手なのだが、

本作(の序盤)は非常にあっさりとした描写に抑えられており、

それがかえって災害の恐さを強調していて非常に良かった。

 

原作では日本が沈没するという研究を行っている博士と潜水士の物語だが、

本作は基本的に女子中学生とその家族の視点で話が進むため、

感情移入しやすく自分が災害に巻き込まれたような緊張感を得る事が出来た。

 

インターネットを駆使して情報を集め、

またその情報に翻弄される描写も現代的で面白い。

 

中盤以降は気になる点が目立つ

ただ、中盤以降は展開や演出に気になる点が多くて集中出来なかった。

箇条書きにすると以下。

 

1.妙に大麻新興宗教を好意的に描いていた点

2.非常に利己的な理由で人を複数殺めた人が良い人扱いされていた点

3.「それは都合良すぎるだろ」という展開の連続

4.湯浅監督独特の大げさな表現がしつこくなる

 

特に1,2に関しては、

作中でもうちょっと「悪い人、悪い事」としての側面を強調して欲しかった。

そもそも新興宗教絡みの話は無くても良かったような……。

 

途中で主人公視点の演出から中途半端に群像劇っぽくなってしまうので、

違う作品になってしまったような感じでちょっと展開について行けなかった。

普通に銃持っていて発砲する人が度々出てくるのも、日本が舞台にしては不自然。

 

また、展開もワンパターンになってきて少々飽きてしまった。

 

この手の作品はどうしても序盤が一番面白くて、

尻すぼみになってしまうのは宿命なんだなあと思ってしまう。

 

とは言え全体を通してみれば上手く話が着地していて、

それなりにまとまっていたとも思う。

 

徹底的に主人公視点で描くか、

もしくはもっと話数を増やして群像劇としての要素を強調すれば、

文句ない名作になったのかな?という印象。

 

一話20分程度の全10話で描くには詰め込み過ぎだったと思う。

 

本作が日本を悪く描いているという事について(追記

日本沈没2020は日本人を悪く描いている!反日的だ!」といった記事が複数見られた。

ハッキリ言って、そんな事はない。

 

良い日本人も、悪い日本人も、どちらも出ている。

それだけの話なのに、悪い方だけを切り取って拡散しているように思える。

 

ハーフや外国人のキャラクターの活躍が目立つのは確かだが、

グローバル社会である現代において「日本が沈む」という話を描くにあたって、

そういったキャラクターの活躍を描くのは当然の帰結だとも思う。

 

作中での日本政府の対応が悪すぎるという意見も見かけたが、

日本全体が沈むという状況にあって日本政府が機能しなくなるのも当然だろう。

 

※※※ここからは完全にネタバレなので注意。※※※

(反転して読んでください。環境によっては反転しなくても読めてしまうかも。)

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主人公も実はハーフであり、それが作品においてのキーポイントになっている。

 

特に、主人公の弟が最後に「(日本国籍を選んだけど)どっちの国籍でも良かったんだけどね」

と言ったことについて。

 

弟くんは終始「日本なんて嫌いだ」と言っており、英語を使う事が多かったキャラクターだ。

「絶対に日本を出ていってやる!」といった発言もしていた。

 

そんな弟くんが大地震に巻き込まれ色々な経験を経て、最終的に日本国籍を選んだ。

そして最後に「どっちの国籍でも良かった」発言をしたのである。

 

要は、弟くんはツンデレキャラなのだ。

「どっちの国籍でも良かった」というのはツンデレのテンプレ発言に沿ったものだろう。

 

日本を嫌っていた弟くんが、日本が沈むほどの大災害に遭遇した事で、

日本への愛着、日本人としてのアイデンティティに目覚めたというお話だと思う。

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