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映画の感想・解説やゲームの話

鬼滅の刃もドラゴンボールも内容が薄いから良いという話

鬼滅の刃が社会現象と言える程のブームになって、

「ストーリーが浅い」「内容が薄い」といった声もよく聞くようになった。

 

だが!

 

過去に大ヒットしたドラゴンボール北斗の拳シティーハンター等、

どれもストーリーなんて浅くて矛盾だらけでガバガバだった。

 

特にドラゴンボールなんて「ストーリーを説明しろ」と言われたら困るくらい、

ストーリーらしいストーリーがないし、内容が薄い。

 

でも、だからこそ大ヒットしたんでしょ、と思う。

少年漫画は本来、シンプルであれば有るほど良いのだ。

 

という事をだらっと書いていく記事。

 

 

複雑化していた主人公の設定

そもそも、一昔前~近年のジャンプの人気作品は、

設定を複雑にしたり盛りすぎたりして良くないなと感じる。

 

例を挙げてみよう。

 

■ワンピース

・ゴム人間

・海軍の生ける伝説が祖父

・世界中が危険視する革命家ドラゴンが父親

・未だ謎の”D”の名を持つ者

・万物の声を聞ける能力

・覇王色の覇気が使える

 

NARUTO

・九尾の狐を体内に封印されている

四代目火影が父親

・九尾を抑え込む特殊なチャクラを持つ母親

・初代火影の転生者

(正確に言うと、忍びの始祖である六道仙人の息子の転生者)

 

■ブリーチ

・父親が死神

・母親がクインシー

・ホロウの魂が混ざっている

 

これらは、いずれも設定盛り盛りの超超超サラブレッド主人公で、

ここまでやってしまうと感情移入しづらい。

 

それに、それぞれの作品の面白さのピークは、

こういった盛り盛りの設定が明かされるより前の連載初期~中盤だったという印象だ。

 

・ワンピはアラバスタ編(ギリギリで空島編)

NARUTOはサスケ奪還編

・ブリーチはソウルソサエティ

までが一番好きだという人は多いんじゃないかな、と思う。

 

近年だとヒロアカも途中までは良かったが、

もはや作中の多くの人物より高い攻撃力を備えるようになり、

さらに複数の個性まで使えるようになって「特別なサラブレッド」感が出ている。

 

だから、鬼滅の刃がここまでヒットした要因の一つは、

「一周回ったシンプルさ」だと思う。

 

※勿論、上記作品を貶しているわけではない。むしろどの作品も好きだ。

 でも、あえて鬼滅と比較すると、こういう要素が有るよね!という事。

 

鬼滅の刃ドラゴンボールのシンプルさ

上記作品について述べた所で、

今度は鬼滅とドラゴンボールの主人公のシンプルさに着目。

 

ドラゴンボール

サイヤ人の下級戦士が両親

・あとはほとんどが努力と仲間の力

 

鬼滅の刃

・ヒノカミ神楽を受け継いだ一族

(あくまで神楽を受け継いでいただけで、最強剣士である継国縁壱の血筋とは無関係

・あとはほとんどが努力と仲間の力

 

どちらも凄く設定がシンプルだし、

「ある程度の素質は持っているが、決してエリートではない」

という点が共通している。

 

主人公の設定があまりに優秀過ぎると、

「努力」「友情」「仲間」といった要素よりも「生まれ持った素質」が目立って萎える。

 

結局、炭治郎はヒノカミ神楽を使いこなすことが出来ないままであった。

でも、その足りない部分を仲間と補い合う展開が、最高に熱かった。

(この流れはドラゴンボールサイヤ人編と共通している。

悟空はベジータに敵わず、仲間の活躍でなんとか勝利した。)

 

ちなみに炭治郎(と禰豆子)は

「吸血鬼化しても太陽を克服できる」というスペシャルな素質を持っていたが、

これは最後の最後で開花した能力であり、

しかもその能力のせいで大ピンチに陥っているのでマイナス要因でも有る。

 

「特別な能力が発動したけど、そこで連載が終わり」というのが本当に綺麗。

 

これは、ドラゴンボールで例えれば、

超サイヤ人になってフリーザを倒した所で連載終了」という感じだと思う。

 

長期連載の弊害

上記の内容を踏まえると、

「長期連載になるとどうしても設定が盛られすぎる(複雑になる)」

のが大きな弊害だと思う。

 

ドラゴンボールもやはり「フリーザ編が一番」と思う人が多いだろう。

 

それは、

・下級戦士である悟空が、一度負けたエリート一族であるベジータを超える

・さらなる強敵であるフリーザに勝つ

という流れが激熱だからだと思う。

 

セル編は孫悟空とその息子である孫悟飯のダブル主人公体制でまだ良かったが、

ブウ編になるとポタラフュージョン、大界王神超サイヤ人のバーゲンセールetc...

と色々有りすぎてイマイチだった。

 

ドラゴンボール程設定をシンプルにしても、

やはり連載が続くとゴテゴテしてきて悪い部分が目立ってくる。

 

(余談だが、

アニメ版では悟空の父親が「最初の超サイヤ人」という設定が後付されており、

あの追加要素は本当に駄目だと思う。せっかくの下級戦士設定が台無しだ。)

 

という訳で、鬼滅の刃はシンプルさに加えて「23巻で完結した」のが本当に素晴らしかった。

より正確に言うなら、あのタイミングで終わったからこそ、シンプルさを保てたのだと思う。

 

鬼滅もあれ以上連載が続いていれば、

設定を盛りすぎてトータルでの評価は下がっていただろう。